田中モトユキ『最強!都立あおい坂高校野球部 1〜3巻』(少年サンデーコミックス)


メジャーラブコメ雑誌というイメージの裏で、何気にスポーツマンガのヒット率が高い週刊少年サンデーの、現在連載中の野球マンガ。(ただ、メジャーラブコメ雑誌のトップの座は週刊少年マガジンに持ってかれて久しいという話も・・・)


簡単にあらすじを。始まりは6年前。女の子なので試合に出られない高校野球部員の女の子と、彼女を「師匠」と呼ぶ少年野球チームの子供たち。彼らの面前では、夏の高校野球の予選。女の子の所属高校はボロ負けする。涙する彼女の姿を見て、子供たちのうち5名は「俺が彼女を甲子園に連れてくぜ!」と心に決める。そして6年後、都立高の野球部顧問として喘ぐ「師匠」の元に5名が集う・・・。


作者はバレーボールマンガの前作『リベロ革命!!』でスマッシュヒットを飛ばした田中モトユキ。絵は端整で、話し運びも上手い。最近のサンデーに多い、個性は薄いものの、基準値は軽くクリアしているタイプの漫画家だ。本作では女の子のかわいさに磨きがかかっており、実にヤバイ。特にチアの女の子。残念ながら、3巻までではあまり出てこなかった。くそう。ここ最近の雑誌連載分を読めば、僕の言うことが分かっていただけると思う。


ただ、難点もある。前作にも感じたことだが、キャラがスーパーマンで、展開が多少安直なのだ。前作はリベロという地味な役回りを軸に据えたことと、主人公はともかく回りに凡人を配したことで、まだ抑制が効いていた。それが、本作では上記の5人はみなスーパーマンである。予選の1回戦では、150kmピッチャーを擁する相手を5回コールドにしている。爽快さは無いではないが、野球マンガとして面白いかというと、首を傾げるところだ。ちなみに、『リベロ』はバレーボール漫画としても面白かった。バレー知識が薄く、リベロに着目した試合運びの描写を新鮮に感じたところが大きいが。
このキャラ設定が今後どう影響していくかはわからないが、サンデーの良作スポーツマンガには、「帯をギュッとね!」や「健太やります!」など、平凡なところから強くなる過程を丹念に描いたものが多い。現在も連載中の「MAJOR」はスーパーマンよりだが、それでも学生野球時代には、(比較的)平凡なサブキャラが物語の魅力を強めていたものだった。
本作にもそういった平凡キャラは、上級生たちとして存在している。ただ、3巻の時点ではまだ、彼らが物語の魅力を上積み出来ていない。


先にも触れた雑誌連載分を見るに、ラブコメ方面のテコ入れがなされている様子。僕の志向的には大歓迎なのだが、本質的な部分のテコ入れにつながるかは、まだ未知数だろう。まだ既刊単行本5冊。これからだ。