『独白するユニバーサル横メルカトル』付記


上の話を読んで久々に思い出したが、俺も小学校6年〜中学の頃、軽い強迫神経症の気があった。寝るときに、布団の上辺と枕との間を一定回数トントンと揃えないと眠りにつけないのだ。当時はもちろん知らなかったが、この手の儀式は「就眠儀礼」という、強迫神経症ではポピュラーなものらしい。これは、日常生活にはそれほど害は無かったが、必要な回数が増えていくので困ったものだ。最初は4回でよかったのだが、8回になり、以後も、一定期間を置いて、倍倍で増えていった。16、32、64で、最高が128だったと思う。きっかけは、「この話を聞くと、夜眠るときに魔物が部屋を訪れ、ドアをノックする。呪文を唱えずドアを開けると、どこかに連れ去られる」という、よくある怪談だった。たしかコミックボンボンに掲載されていたものだ。古今無双の弱虫の癖にアホなもので、立ち読んだときには覚えていた呪文を、不幸にも突然その話を思い出したときには忘れてしまっていたのである。怖くなってあわてて本屋に走ったが、件のボンボンは次の号に代わっていた。怯えに怯え、一週間ほど両親の部屋で一緒に寝かせてもらったが、ついに父が業を煮やし、一人で寝よと厳命。ただ、部屋に楽しみも与えようと配慮してくれたのか、CDラジカセを買い与えてくれたような気がする。しかし、部屋に夢の機械が訪れ、長渕剛の『俺のギターにはいつもHeavy Gauge』の渋さに弱い自分を慰められようと、怖いものは怖い。そんな中で編み出したのが、上に書いた就眠儀礼だった。


直ったきっかけは覚えていない。やらなくなってから1年ほどして、やっていないことに気付いた、という感じだった。


NEVER CHANGE (24bit リマスタリングシリーズ)

NEVER CHANGE (24bit リマスタリングシリーズ)


上で触れた『俺のギターにはいつもHeavy Gauge』を含む、長渕剛のアルバム。初期の曲をセルフカバーしたもので、シングルヒットした『乾杯』他、いい曲が多かった。