カーター・ウォン(銀魔王の中の人)の現在


久しぶりにカンフー映画『ドラゴン太極拳』を観て、悪役銀魔王に惚れ直す。
ぴゅーんという音と共にポーズをつけて気を貯めれば、刀も拳も通じない。悪役の癖に冒頭から40年の修行シーンという特別待遇。
本編でも、善玉道場の弟子たちを実力の違いを見せつけて打ち負かす様が実に格好いい。奥義「八卦の術」でハメられ中の一番弟子ガクミントーの「ウヒャオハオハオハオホワア」は笑えるし、二番弟子リショークンの小物全開のやられっぷりも最高だ。


この映画、悪役のはずの銀魔王の強さを知らしめるためのような変な映画だ。
悪党に師匠を殺された門下生たちの復讐を描く敵討ちものなのだが、善玉側が実力で勝つ勝負が、冒頭で善玉道場の師範が、銀魔王の手下である黒白小鬼を撃退した奴くらいしかない。
その師範も悪玉副将格の金魔王に1分で片付けられてしまう。
残る善玉の勝ちは、罠、集団虐殺、不意討ち、と薄汚いものばかり。
対する悪党側は、暗器使いの金魔王はともかく、銀魔王は圧倒的な肉体派ブリ。殺しても殺しても代替わりしては襲ってくる門下生の武器と悪知恵を単独徒手空拳で圧倒的に粉砕し続ける。


これが例えばジャッキー映画なら、最後には主役が奮起して悪役を実力で凌駕して、倒して終わりだ。悪知恵の出番があっても、それもジャッキーの実力のうちだと思わせる演出になっている。
この映画は逆だ。最後の戦いでも、銀魔王が門下生刺客三代目()の成長した剣技と暗器に苦戦するも、最後には改めて実力差を見せつける。
ひとたび銀魔王が奥義「八卦の術」を繰り出せば、三代目も一方的に嬲られて戦闘不能に近い状態まで追い込まれる。
三代かけた復讐でも、肝心の奥義には最後までまともな対策を生み出せなかったのだった。なんなのか。
銀魔王は泰然自若、立つこともできなくなった三代目を睨み据えて戦いが終わる。悪役が主役の手の内をすべて曝け出させたうえで、圧倒する、まさに横綱相撲を見せつけてくれる。
その上で最後の最後に騙し討たれて終わるので、映画が終わったときには、銀魔王の強さしか印象に残らない。


まあ金銀魔王も単独では叶わない相手を二人がかりで殺したりしているが。


ふと思いついてYouTubeで検索してみたらやっぱりあった。ファン多いのね。


無敵銀魔王


八卦の術&「ウヒャオハオハオハオホワア」


ついでに銀魔王の中の人であるCarter Wong(カーター・ウォン)で検索をかけてみたところ、案の定というか、変なものが・・・。


『lassic KungFu, The Fatal Flying Guillotine.』


なんだか知らないが、カーター・ウォンと少林寺っぽい坊さんが、妖怪じみた爺さんと戦っている。
この爺さんがまた強くて、二人相手に互角だし、おまけにギロチン2台を操る。操るって言うか飛ばしでる。UFOにしか見えん。坊さんは死亡、カーターは命からがら逃亡。


なるほど、銀魔王の強さはこうした化け物を倒してきた故の・・・とか若き日の銀魔王を描いているということにしてみるとより燃えるものがあるが、こちらでのカーター・ウォンは主役のようだ。公開年はたった1年しか違わないようだし。しかしこれも変な映画だな。
カーター・ウォンはたしか日本でのカンフー・ブームにも一役買った有名な少林寺もの*1でも主役を張っていたはずだが、その一方でたしか幼少時に観たデブゴンシリーズの一つではデブゴンにヌッ殺されていたし、金粉塗れのオッサン*2だのこのギロチン爺だのを敵とした妙なモノにも出ているというのは、変な人だったということなのだろうか。


今はどうしているのだろう、と思いググってみると、『片腕拳王2005』なる映画の宣伝ページが引っかかる。

主役を演じる‘バクスター・ハンビー’はカナダ人のムェタイ現役世界チャンピオンである(WMTF世界スーパーウェルター級チャンピオン)。 (中略) ハンビーの師匠は『少林寺への道』でカリスマ的な人気を誇り、かの‘ヒクソン・グレイシー’に打撃技を伝授した現役武術家‘カーター・ウォン’氏。今作ではプロデューサーを担当し自ら出演もしている。カーター・ウォン氏は現在も「国際総合拳世界連盟」を主催し、全世界に10万人の会員を抱えている武術家であり、ハンガリーの特殊部隊の武術指導者でもある。


国際総合拳世界連盟・・・10万人・・・特殊部隊の武術指導者・・・凄すぎるぜ銀魔王・・・。
おまけに、カーター・ウォンはバクスター・ハンビーと実社会でも師弟関係のようで、下に紹介するページには、去年のカーターの写真が!!

ウォン氏は「ハンビーの前回の試合は、9月11日ラスベガスでのインターナショナルムエタイで、相手はハンビーより15ポンドも体重が多かった。ハンビーは大変苦戦したが、最後には勝利した」と、ハンビーの心の強さをたたえた上で「勝ち負けを考えず、自分の力を出しきって欲しい」と、アドバイスを送った。


うおー齢食ってる!でもたしかに銀魔王の面影が・・・。なんかうれしいなあ。

*1:これと↓

*2:これは同じ作品で、ヒットした少林寺ものの中では色物のようだ。つまり出演作は妙なモノばかりだということだろうか・・・