プログラマーが悪い


分裂勘違い君劇場が今回も面白かった。やっぱこの人頭いいし、運用保守メインから今は成り立てプログラマーとしてIT業界の端くれに住む身としても、記事に共感できるんだよねえ。今回の記事もそう。

過酷な労働条件を受け入れるプログラマというのは、ダンピングをしています。
つまり、労働力の不当な安売りです。 本来、プログラマは、サービス残業を強要されたら、それを拒否すべきです。 あらかじめ無理なスケジュールだとわかっているプロジェクトも、拒否すべきです。 安い賃金で働くことも拒否すべきです。 それらを拒否せずに、受け入れるプログラマが多いから、他のプログラマまでそれらを受け入れなければならなくなるのです。


たしかに極論だ。俺たちが悪いのかよ!だが、おっしゃるとおりだ。ITの現場ではサービス残業や、ややもすると納期破りによるタダ働きまでが見られるものだが、それはプロジェクトマネジメント、スケジューリングの甘さからくる。そしてその甘さは、プログラマ側に残業への嫌悪感があまりないことに起因するところも多いように思えるのだ。仲間意識や使命感に支えられた、残業、休出がバッファとすら言いがたいくらいに織り込み済みのスケジューリング。
で、『分裂勘違い君劇場』さんの意見をさらに進めるなら、サービス残業じゃなければ、残業代もらえればいいってもんじゃないんだ。俺の知っている環境では、残業代はある程度(20時間前後)のカットはあるが、出すところが多い。で、プログラマーの側も、この残業代込みである程度の収入を確保している場合が多い。あくまで俺の実感だけど、サービス残業と同じくらい、なまじ残業代が出て、それがある程度デカイため、安いベース賃金に甘んじているのが問題なんじゃないだろうか。残業代で月5〜10万プラスになったとしても、それで毎日平均12時間労働の月残業100時間突破*1じゃ、やっぱり時間単価は安いし、拘束時間の長さで損をする。加えて、IT業界における残業にはもうひとつの問題がある。多くの場合、プロジェクトの予算枠は当初のユーザーと会社との合意枠で固定だからだ。俺は遺憾ながらまだ下っ端だから、実際にプロジェクトマネジメントや契約した経験はないけど、IT業界の外注仕事で主流の請負契約だと、この金でこの仕事やってね(=成果物を納品してね)って話のはず。そりゃ人月計算はするけど、それはあくまで「何人で何ヶ月かかる仕事だから、これだけ払いますわ」という、料金見積りの話。実際に何人が何時間で仕上げようが、ユーザーは知ったこっちゃないから、『思ったより労力かかったから金追加してよ』なんて言っても、仕様変更でも発生していない限り聞いてくれない。それでプログラマーが残業仕事したらするだけどうなるか?会社の儲けが減る。で、結局、己の給料やボーナスに悪影響を及ぼすことになる。広い意味ではタダ働きなんだ。残業代が会社の儲けを損なうというのはどの業界でも共通だろうけど、IT業界の請負契約というのは、それがより顕著に現れる例なんだろうと思う。
だからこそ、最初の工数見積りとスケジューリングが大切だって話になるんだけど、多少の無理があっても「できます、やります」って言わなきゃ外注の仕事が取れないんだ、という現実もあるみたいだ。やっぱり、プログラマーと下請け会社の共闘の立場からの現実的な努力ポイントは、最大限余裕のあるスケジュールを組んでor契約金額を上げて、その上で生産性を上げて、残業せずに仕事を片付けることになる。プログラマーの立場で言えば、自分の自由な時間を手に入れて、かつ会社の儲けを減らさないことで間接的に自分の取り分を増やすことを目指す。

プログラマは、いつでも転職の準備をしておくべきです。 そして、無理なスケジュールのプロジェクトやサービス残業を拒否することで不利な扱いを受けたら、さっさと転職すべきです。 また、過酷な労働条件で働く意思はなく、それを無理強いするならいつでも転職する、という旨を、あらかじめ上司や会社側に通告しておくべきです。


これもおっしゃるとおり。馬鹿正直に通告までする必要はないが・・・。自分のスタンスを明確にしておくのはいいかも知れないが。むろん現実を見据えれば、転職は年齢的に、技術的に困難な場合もある。プログラマーや保守運用といった下っ端・裏方の人たちほど、不平を怯えでねじ伏せながら、長時間の仕事をしている感じがある。「きついけど、もう30越えたしなあ。いまさら他の言語やOSやるのもリスキーだし、今のスキルが生かせて給料上がるなんてそうそうないよね」ってな。やっかいなのが、不満や怯えを消すために、先にも触れた仲間意識や仕事への使命感が機能している観があることだ。「他のみんなだってがんばってるし、仕事なんだからやらないと」ってな。これらは簡単に否定していいものではない気がするからやっかいだ。こいつら、どうも真の問題(労働時間単価の安さ、スケジューリングの失敗他)を隠蔽する働きをしている気がして、団結や品質向上のメリットよりそのデメリットがでかいから否定したいんだが。


俺は同業者?なせいか、『分裂勘違い君劇場』さんのエントリは心構えというか、人生を処する上での参考として読んでいるところがある。極論歓迎。


ついで、経済のお話だが、これもわかりやすかった。山形浩生氏のブログでも紹介されていた。


分裂勘違い劇場「他人の生産性が向上すると自分の給料も増えるのか?」を中学生でもわかるように図解してみました
http://d.hatena.ne.jp/fromdusktildawn/20070215/1171504603


山形氏の生産性の話に関する池田信夫氏のツッコミ記事を読んで、批判になってないように思えるし、かえってわかりにくいような・・・と首をひねっていたのだが、自力でそこを整理し切れなかった忸怩はあれど、その印象じたいは間違ってなかったようで安心。安心していてはダメなのだが。グレーゾーン金利の宿題も残ってるしなあ。

*1:100なんざ序の口、200越えてから文句言えや、という意見もあるかも知れないのが恐ろしい