生産性の話について追記


山形氏の話のキモは、赤文字強調の「賃金水準は、絶対的な生産性で決まるんじゃない。その社会の平均的な生産性で決まるんだ。」じゃなくて、そのすぐ後にある理由付け「所得水準は、社会の平均的な生産性で決まる――そしてそれを引き上げているのは製造業だ」だと思うのです。

所得水準は、社会の平均的な生産性で決まる――そしてそれを引き上げているのは製造業だ

あなたの給料が高いのは、社会全体の平均的な生産性が圧倒的に日本のほうが高いからだ。そしてそれを引き上げているのは何だろう。床屋でも官僚でも管理職でもプログラマでもない。トヨタが、松下が、帝人が、すさまじい大量生産によってすさまじい生産性を実現しているからだ。こういうところの工場労働者たちは、後進国に比べて一人あたり数十万倍以上の生産性を実現している。スリランカの労働者は、車(たとえばオートリキシャのボディだけでも)を作るのに一週間以上かかる。だって手で板金を曲げて、パイプを溶接して、屋根つけて、塗装して……というのをやるんだもん。日本では、たぶん、平均で見ると工場の労働者一人あたり二、三分に一台くらいで車が生産できる。ほとんどすべてオートメーションの工場だもんね。

そしてその生産性の差が他のところに波及する。


これがキモではないのかと。製造業は、後進国がそうそう追随出来ない充実した生産インフラと生産管理技術による大量生産ができるから、高い生産性を維持し、もうけてる。だから、そこにサービスを提供する国内他産業の賃金も上がる。賃金の向上は、特に医者やウェイトレスのように生産性の向上が難しい職種では、彼らが産するサービスに対価を払う側の懐具合が大きくかかわってくるからだ。という話で、わかりやすいよなあと。それを、「平均的な生産性で決まる」の部分を槍玉に挙げてうだうだ言っているのが、ポイントずれてるよなと思ったわけです。


あと、池田信夫氏の議論に対するスタンスに違和感を覚えたのもある。

私は「日本の所得水準が高いぶんだけ、絶対価格は中国よりも高くなる」と(わざと曖昧に)書いたが、山形氏は見事にこれに引っかかって


「わざと曖昧に」って。論点のずれた批判と合わせて、相手との議論による実りより、勝ち負けを優先しているように思えたのでした。