生産性議論のその後


クイズ:経済学者3人にきいてみました。
http://d.hatena.ne.jp/wlj-Friday/20070219


山形氏が池田氏の誹謗を受け、まともな経済学者3人の賛同コメントを集めるというアクロバットを決めていた。衒いなくこういうありがたいことをやってくれた山形氏にも、それに対してこれまた衒いなく返答しておられるお三方にも、勝手に感謝を。世界は美しい、という感じ。いまだそこからはるか遠くにいる自分が悲しくもあるが。ロバート・J・ゴードンという方の返答が簡潔かつ行き届いていて必見。


で、池田氏のほうはといえば、自身のブログのコメント欄で論破されていた。肝心の湯加減の点についても、用語の違いを剥ぎ取れば山形氏と同意見であることになった挙句に・・・。


追記:同意見というのは違うか。あくまで平均的な生産性の重要性は認めていないし。いずれにせよ、以下の一文で墓穴を掘ってしまった形。

クルーグマン (池田信夫) 2007-02-16 01:08:57

>長期的に生産性が上昇したとき、実質賃金がほぼおなじだけ上昇しなかった例は、どの国にも見られない

もちろん、これは正しいんですよ。集計的にみたとき、生産性が上昇したら賃金が上昇するのは当たり前です。問題は、すべての業種で同じように上昇するわけではないということです。ハイテク産業では生産性が急速に上昇するだろうし、喫茶店ではほとんど上昇しないでしょう。この場合、喫茶店の賃金は全業種の「平均生産性」では説明できないということです。


これだと、生産性の上昇に合わせて製造業の賃金が突出して上昇していないとおかしいことになってしまう。そうなっていないのは製造業のもうけが喫茶店の賃金に還流しているからだろう。そこをつっこまれて池田氏は『製造業の所得に「波及効果」があるというだけのこと』と返しているけど、ここまできたらもう些細な言葉の違いでしかない。むしろ賃金の決定要因として業種ごとの限定生産性にこだわり、国内外の賃金差についてはせいぜい不完全競争を指摘する程度だった池田氏のこれまでの議論からすると、どんでん返しの感をぬぐえない。因果関係を考えると、製造業の生産性の高さが社会の平均的な生産性を引き上げて、それが喫茶店の賃金の高さにつながっていくという山形説のほうがはるかに分かりやすい。


で、

もう一度だけ (池田信夫) 2007-02-16 12:33:23

どうして同じコメントばかり来るのか理解できないんだけど、

>山形氏はそれ以上のことを言っていないように思うのですが。。。

それ以上のことを赤いデカ文字で言ってるんですよ。

>賃金水準は、絶対的な生産性で決まるんじゃない。その社会の平均的な生産性で決まるんだ。

ここでいう「絶対的な生産性」は、個別の労働者の生産性という意味です。彼は、平均的な生産性だけで賃金が決まると断定しているのです。


という点しか残らなかったという結論に。たぶん「だけ」がこだわりどころなんだろうが、前後を読めばそんなことが言いたいんじゃないのは分かるだろうに・・・。


しかもなぜかそのあとのコメント欄はチョムスキー批判に話が飛んで、言語学全体を侮辱して炎上という予想外のジャンクな終末を迎えている。踏んだりけったりだな。なんか、『こぶとり爺さん』あたりの、いい爺さんと悪い爺さんの話を思い起こさせられた。