大学生のころくらいが、一番洋邦のヒットチャートを追いかけてたかなあ。
覚えている佳曲をYouTubeから拾ってみるテスト。
Poco『Call It Love』
アメリカの大御所バンドの再結成ヒットだったかと。ついでに同バンドの70年代のヒット。
Poco『Indian Summer』
海にたゆたうような曲調と音像が最高です。Indian Summerっていうタイトルもかっこいい。小春日和って意味だっけ。この言葉を聞くといつも、吉田聡の漫画を思い出します。もう『ダックテール』の片平しのぶより年上なんだなあ。
ついでに『ダックテール』の紹介。四話構成。自分に自信のない高校生の少年が主人公。ウンコをもらしかけて公衆便所に駆け込んだところに、居たのは怪獣の着ぐるみ。あえなく彼はウンコを漏らす。着ぐるみの中の人はリーゼントのツッパリ男で、大笑いした男は少年に、詫びにおごるから夜に酒場に来い、と誘いをかける。男のアヒルの羽のような後頭部(ダックテール)が少年の目に焼きつく。
自己嫌悪にさいなまれながらの帰り道に少年は、片思いの女の子が別の男と歩いていたのを思い出して、さらに落ち込む。
「がっかりしたけど・・・ああ・・・!! やっぱりオレらしいやって思ったじゃないか!!」
「クサイって言葉がきこえる! ダサイって言葉がきこえてくる! だから大声で叫べもしない!」
(吉田聡『ダックテール』(『バードマンラリー』所収)
この台詞でも感じるのだが、この時期の吉田聡の漫画は、他に比べるものがないような自意識描写の鋭さがあった。今となっては現在再発中の『湘南爆走族』だけが有名な印象だが、『スローニン』、『純ブライド』*1と、裏ベストと呼べるような中篇を連発していた時期だ。
ますます自暴自棄になった主人公は酒場に向かう。普通年ばれるだろ、という気もするが気にしない。
そこでは見知らぬ大人たちによる、少年が現在通っている高校の同窓会が行われていた。少年は一人酒を痛飲し、涙する。
『ねえ彼女いるの!? いてもおかしくない風に見えるよ、絶対!!』
「そんなこといわれていい気になって・・・・・・あまり気にもしなかった彼女を好きになって・・・・・・
なんでオレ自分の意見がねえんだろう」
「こんなんじゃあ学校も友達も・・・・・・未来も・・・・・・ ああ!!きっといい加減に決まっていっちまう!」(同上)
そんな少年の周りには『オレのやってる仕事ってムズカシクてさ、だれでもっていう・・・』などと同窓会に興じる大人たち。
「へっ!!10年たってもあんなもんかよ・・・・・・!
でも、オレは自慢して人の気持ちひくだけのものももってねえもんなあ・・・・・・」(同上)
今読んでも痛いぜ。大嫌いな自分を捨てようとなぜか旅に出る決意をする少年。そこに現れたツッパリ。彼も同窓会のメンツだった。
周りの大人と彼が同級生と聞いて驚く少年に一言。
「29歳!片平しのぶ 文句あるか!!」
(同上)
ツッパリは無礼な旧友にアッパーをお見舞いした後、他の女性から高校時代につき合っていた少女の消息を聞く。そのまま彼女の住む札幌へ向かうというツッパリは、少年に一緒に来いと誘う。少年は『ここ・・・神奈川だぜ・・・』と言いつつツッパリのバイクの後ろにまたがっている・・・というのが第一話。ここから先では札幌までの道のりと、二人にとっての少年期の終わりである結末が語られる。
アニメ映画監督の宮崎駿も、この作品が収録されている『バードマンラリー』に3pに渡る解説を寄せて、『湘南爆走族』以後の作品、特に『スローニン』とこの『ダックテール』を激賞している。
「湘爆」以降の彼の仕事を見ると、作者自身がその後の江口たちについて考え続けているのが判る。かこわれた学園という舞台を、世間としての学園に捉えなおすことで、答を出そうとしているのだと思う。膝を折ってしまった、あるいは折れかかった少年が、いかに自分の足で立つかを、彼は熱をこめて語ろうとしている。
非常に頷ける指摘だ。『スローニン』が、共に高校スポーツで挫折した少年二人を、『純ブライド』が元不良のミュージシャンを主人公にしているだけに。で、『ダックテール』にいたっては、29歳で高校中退その日暮らしのバイク乗りだ。
この作品の後の吉田聡は、ほぼ江口そのままのルックスの男が現役暴走族でパパという、あまりにもそのままにその後の湘爆にチャレンジした『荒くれKNIGHT』で再びの人気を博して、今も現役だ。正直なところ、近年の作品は昔ほどの切れを持っていない気がするが(特に佳作『トラキーヨ』を最後に青年誌作品が不振)。
吉田聡短編集 バードマン・ラリー (少年サンデーコミックススペシャル)
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