内山、細野世界戦予想


久々の更新。この試合だけは書かずにいられない。待ちに待った内山高志の世界挑戦。細野の試合共々、直近の試合を鮮烈なKOで飾って評価急上昇中の王者に、無敗の東洋王者が挑戦するという構図。盛り上がります。


WBAスーパーフェザー級 王者 ファン・カルロス・サルガド VS 東洋スーパーフェザー級王者 内山高志


予想:内山の中盤以降のTKO勝ち、あるいは中〜大差判定勝ち。


願望込みなのは承知の上ですが、例によっての内容での内山の完勝しか予想できない・・・。
完勝続きの内山の東洋戦を全部見て麻痺してるからかもしれませんが・・・。
まあ正確に言えば、序盤KO負けてのも少しだけ頭をよぎるんですが。目と体が慣れてない序盤にサルガドのロングレンジからの強いパンチをもらっちゃった場合だけですね。サルガドはKO率が高く、それも序盤が圧倒的に多い。怖い相手であることは間違いないんですが。


巷の予想は結構内山に辛いんですよね。元々内山は、近年の日本アマでは一、二を争う高いアマ実績と、プロ入り後の安定した試合内容に比して、今ひとつマニア筋の評価が高まらない選手です。曰く、打たれ弱い、スピードが遅い、攻撃が単発、顎が上がりぎみ、パンチの引きが遅い、等々・・・。今回の挑戦に際しても、王者のサルガドがリナレスを1Rでストップしているため、『内山はサルガドと比べて世界レベルに無い』という意見がとても多い。
こうした見方が、必ずしも不当な見方とはいえないのが悩ましいところ。格下や微妙な世界ランカーばかり相手にしていた亀田兄弟と同じで、どうにも穴ランカーに見えたタイのトーン以外の、東洋圏外の世界上位ランカーとやっていないため、世界上位との相対的な実力査定が計りがたいところはあると思います。


とはいえ、国内/東洋圏で抜きん出た実力を率直に高く評価する方もある程度いて、それがボクサー同士のスパーリングを目にし、話を聞く立場にあるような識者に多いのが救い。
それに、内山の場合は、上記の一見欠点に映るあたりもひっくるめて*1、堅実なスタイルを完成させている感があります。派手な動きではなく、地味な距離の調整や位置取り、長い左ジャブ、攻撃後の頭の位置やバックステップで、被弾を未然に防いでいる。
僕が内山を高く買っているのは、この慎重なスタイル故です。1発の無駄な被弾も潔しとしないメンタリティ、恵まれたリーチ、鍛え上げたパワー。これらを背骨に展開される、日本では他に類を見ない攻撃的アウトボクシングを実現しています。被弾を構わずなぎ倒しに行くか、パワーが無い故にヒットアンドアウェイかに二極化しがちな日本のボクサーの中では本当に異例。
打たれ弱さを心配されることが妙に多いですが、本当にどうしようもなく打たれ弱いなら、阪東ヒーロー戦の4Rで詰められてるんじゃないかな。ポイントを渡すことすら少ないので、クリーンヒットをもらった数少ない機会がクローズアップされている感があります。


それと、楽な敵に楽勝続きのような東洋防衛戦ですが、直近の東洋1位メルガレホは結構な難敵でした。彼が戦前に内山のことを『頭を動かさないイージーターゲット』と酷評し、実際の試合でも内山の打ち終わりとジャブに右を被せて来たんですよね。序盤は結構危ないタイミングで被弾する場面もありました。それでも、その序盤もポイントは制圧し、3R以降は距離を掌握して、ボディブローを軸に一方的な展開に、あとは攻撃的アウトボクシングが一方的に展開され、HPを徐々に削られまくる相手が回を追う毎にヘロヘロになるいつもの内山劇場。

サルガドの試合をみたのはWOWOWでのリナレス戦と、youtubeに上がっている苦戦した1試合のみですが、メルガレホとサルガドとを比べたら、サルガドの方が強いのはたしかですが、隔絶した差があるようには見えないなあ、と。
違うのは、フットワークを使ってリナレスともジャブとボディの刺し合いをやってみせたところと、内山と互角以上の体格、下半身を有効に使った距離の長いパンチ、ダメージを与えた後の詰めの鋭さ・・・。全然違うじゃないかという話かもしれませんが、あくまで程度の話で。リナレスを1Rで眠らせた!という結果ほどの、東洋圏と隔絶したスーパーボクサーには見えないんですよね。ラッキー・パンチではなくとも、ローカル・ホープが予想以上の結果を出した、というところなのかな、と。
リナレスとは10回やったら9回負けるくらい力の差があると思っていた、というサルガド陣営の事前予想(だったかな?曖昧な記憶です)は謙遜ではないと思います。同じ仮定の上で、それでも最初の1回に勝てばいいんだ、という石井一太郎の喝破も真理ですが。

サルガドは神経質そうですし、今回の試合も楽観してないだろうなあという気がします。対する内山は自信ありそう。想像ですが、ウンベルト・ソト相手だと、分の悪い厳しい試合になると覚悟していたでしょうが、サルガドなら抑え切る自信があるんじゃないかなあと。体格は劣ってもリーチは内山の方が長いのも良い点ですね。スーパーフェザー級で自分よりリーチの長い相手は、サルガドもそう経験ないのでは。


ということで、サルガドの攻撃を堅実に捌きつつ、2Rあたりからボディを軸に崩して、後はいつもの内山劇場、というのが僕の予想です。



WBAスーパーバンタム級  王者 プーンサワット・クラティンデンジム VS 挑戦者 東洋フェザー級王者 細野悟


予想:細野小差判定勝ち


この試合は本当に分かりません。巷の評価は王者圧倒的有利ですね。
プーンサワットが、おそらく現在のタイではPFPの強い選手なのは分かるんですが、バーナード・ダン戦の鮮烈な勝ちっぷりから評価がインフレ気味な気がするんですよね。シドレンコ戦の終盤、距離を取ってサイドに動いてヒットアンドアウェイ狙いのシドレンコにほとんど何も出来ていなかったところも減点材料。
細野が榎戦と同様に、序盤を打ち勝って、倒しきれない場合はアウトボクシングで後半をポイントアウトする展開に持ち込めれば、勝機が見えると思ってます。オープンスコアリングシステムじゃないので、そう簡単にはいかないでしょうが。

ただ、パワー頼りで不用意に打ち合ってしまうと、ショートの上手いプーンサワットの前にポイントを失いダメージを蓄積、というまずい展開に陥ってしまいそう。
この試合はプーンサワットにKO率ほどパワーが無さそうなのと、反面細野の豪腕でも倒れなさそうなこと、細野もアマ上がりで器用な面があることから、消耗戦の判定勝負になるのかなあという気が。

こう書いてみると、細野小差勝利というのは、あんまり根拠ないんだなあ。でも、巷の評価ほどプーンサワットが圧倒するとも思えない・・・。とにかく予想できないですね。内山ほど心理的に細野にコミットしてないのもあるでしょう。思い入れないと予想に自信が持てない、というのはようは願望を語っているにすぎないw所詮素人だな。

この二人はやってきた階級が違うのも予想の困難さに拍車をかけます。バンタム級から上げてきた小柄なプーンサワットと、フェザー級から落として挑戦する細野。細野の減量の苦しさ加減とリバウンドが鍵を握る部分もあるかと。つか細野、アマではライト級でやってたというのに大丈夫なのか?プロキャリアにしても序盤はフェザー級+α〜スーパーフェザー級ウェイトでやってて、本格的にフェザーに落としたのは東洋戴冠以降。アマのライト級とプロのスーパーバンタム級だと、リミットが約5kg違うんですよね・・・。


関係ないですが、タイのフェザー級のチョラターンとライト級のサッダムってどんな選手なのかなあ。二人とも無敗で、しかもそこそこの相手に明白に勝ってきているようなので・・・。
タイは今世界チャンピオンクラス以外のホープが空前の人材難状態らしいですが・・・。
新鋭で世界とったのがオーレイドンくらいですからね。

*1:この『ひっくるめて』というのは御都合主義の論証に便利ですね。『あなたをひっくるめて 響子さんをもらいます』 By 五代くん