アリソン・アトリー『氷の花たば』

 

 

話をタイトルに記事にすると決めた舌の根も乾かぬうちに方針変更。

アフェリエイトブログとしては、商品をタイトルにするのが正しいと思ったので。

 

買って長いのにいまだに全部読んでない。冒頭の「メリー・ゴー・ラウンド」という短編がよいのだった。

 

イギリスの田舎に、秋になるとキャラバンがやってきてフェアがひらかれる。見世物の中に、機械仕掛けのメリー・ゴー・ラウンドがある。村のふたごの兄弟ジョンとマイケルは木馬が大好きで、おこづかいの続くかぎりメリー・ゴー・ラウンドを楽しむのだが、とうぜんお金は尽きてしまう。深夜、マイケルは家の窓からキャラバンを眺めながら、なじみになったキャラバンのおばあさんから貰った、ローマ時代のものだという青銅の呼び子を吹いてみる。すると、メリー・ゴー・ラウンドの馬たちが動き出して…という。

児童文学なので語り口は幼く、ありえない出来事を見てきたように書く文体がマジカルだ。

「メリー・ゴー・ラウンド」には、「戦争中だったので、もちろんココヤシの実はなくて」という文章がある。注によると、第二次大戦のことだそうだ。原著『Twelve Tales of Fairy and Magic』は1948年に出版されている。エンジンを動力にして動くメリー・ゴー・ラウンドに、「デイジー・ベル」を鳴らす銀のラッパのスピーカー。そうした複製技術機械が、1940年頃にはすでに、各地を回る見世物の舞台装置として活躍していたのだなと。

アトリーは田舎育ちで自然描写に定評がある作家とのこと。そうした作家が風物詩として機械仕掛けの娯楽施設を描写しているところに惹かれる。

Philip Hepworthによる挿絵もよい。児童文学の挿絵はこういうのだよ、とガッツポする絵柄だ。ググってみるとアトリーより4つ年下のイギリス人建築家が引っかかる。同一人物なのかはわからない。

 

ついでにアトリーを知ったきっかけは何だっけと。『思い出のマーニー』だった。

岩波少年文庫版『思い出のマーニー』が内容、翻訳ともによかった。

 

 

 

訳者の松野正子氏による他の翻訳を探したところ、同じく岩波少年文庫版のアトリー『時の旅人』がそうだった。

ロンドンから古い農場に療養に来た少女が、そこで16世紀と現代(19世紀終わり~20世紀くらい?)を行き来するタイムスリップ?もの。16世紀のその農場は史実上の大事件の舞台で、少女はその事件で犠牲となった人々と生活する。なお過去の出来事には干渉できないっぽかった。これもよかった。