WOWOWエキサイトマッチ 2007年5月14日放映分


スーパーミドル特集。無敗の2大チャンプ、ジョー・カルザゲ(WBO)、ミッケル・ケスラーWBCWBAスーパー)の防衛戦。


カルザゲは連打で序盤ストップを呼び込むKO勝ち。カルザゲの強さだけが目立った試合でした。


見ごたえがあったのは、ケスラーの防衛戦。無敗の挑戦者リブラド・アンドラーデを迎えての防衛戦だったが、スキルで圧倒。ケスラーの試合ははじめてみたのだが、解説陣が繰り返す『ボクシングの教科書』という言葉に偽りなし。ワンツーが力強く、きれい。ディフェンスも固く、攻防の切り替えがスムーズ。そしてパンチもある。浜田氏が『ナイスパンチ』を連呼。まだWOWOWに入って日が浅いが、地上波、CSダイナマイトグローブでの解説を含めて、浜田氏がこれだけ『ナイスパンチ』を連発する試合ははじめて。敵手アンドラーデも、スキルで圧倒され、早く強いブローを間断なく打ち込まれながら、無敗の実績に恥じず、常に前に出て、チャンピオンにプレッシャーをかけ続ける。浜田氏は高柳アナの言葉も時々耳に入らないほど試合に魅入られている様子。『なんですかな?』に萌えた。浜田氏「チャンピオンも必死ですよ。普通なら前に出るところを、下がってますから!」たしかにそのとおりで、ワンサイドなのはケスラーの攻防の切り替えがスムーズだからで、アンドラーデは当たらないまでも、いいパンチを入れられたら必ず反撃している。中盤からは体力のセーブを考え始めたらしいケスラーが休みかけるたびに、アンドラーデの圧力とパンチがケスラーを浅いながら捉える。ワンサイドなのに目が離せないという、熱いバトル。

浜田氏とジョー小泉氏の二人がめずらしく互いの言葉を汲み取りあう形で解説をしていたのも、この試合の白熱振りゆえか。毎週同席しているのにもかかわらず、おのおの勝手に語りまくるばかりで言葉を絡ませることが少なく、特に小泉氏のダジャレに無反応を決め込む浜田氏は小泉氏のことが嫌いなんじゃないかと思わされるくらいだったが。しかし浜田氏、現役時のロープに突っ込むラフファイター振りには大いに笑わせてもらったものだが(失礼)、これだけロジカルに語れる人なのだな。

小泉氏がアンドラーデ陣営(薬師寺に勝ったウェイン・マッカラーがセコンドについていた)のラウンド間の発言を適宜伝えてくれたのも好印象。『がんばれがんばれ、それしか言うことないですよね』、『パンチをまとめろ、って言ってるんですよね、でもパンチをまとめるスタミナがあるかどうか』この言葉が重過ぎる試合展開。


11Rに小泉氏『ラスベガスだったら止めてますね。あまりにも一方的で』と、興行サイドの発言。高柳アナの、挑戦者セコンドは棄権しないのか、という問いに答えて浜田氏『世界タイトルですから。タイトルかかってなかったらあきらめさせるでしょう。世界タイトルですから。あえて言えば、この試合が最後になろうが何しようが、やりますからね』・・・元選手の言葉は重い。
最終回、ケスラーのラッシュ。フォームもパンチの切れも崩れていないのも、打ちっぱなしの展開でまだ体力を残しているのも、一発のある相手にポイント的にはワンサイドでありながら、最後まで本気で倒しに行くのもすばらしい。


ポイントは三者120-108、三者すべて全ラウンド10-9の完封でケスラーの勝ち。小泉氏いわく『シャットアウト・ディシジョン』。いいものを見た。


あと、ヨーロッパ軽量級王者の試合もハイライト放映された。WBOフライ級王者のナルバエスと、WBAバンタム級王者のシドレンコ。シドレンコは顎を守る固いガードが印象的で、中量級のコットもそうだったが、顎の弱い亀田のロールモデルに出来そうな選手。ただ彼らは、ある程度の打たれ強さも持っているから、中間距離で打ち合いも出来るのだった。あれだけ顎が弱いと、同体格の相手と打ち合うリスクを負うのは怖かろうが、そこを克服して攻め手を増やさないと、フライ級じゃ通用しないと思うのだが。いい勝ち方をするための調整試合は理解できるが、ミニマム級の選手とスパーして、ライトフライの二流選手と当てるのが、どれだけ今後の彼のためになるのかは疑問。