WOWOWエキサイトマッチ 2007年5月21日放映分


目当てはWBAスーパーバンタム級王者、セレスティーノ・カバジェロの防衛戦。この階級では異例の身長180cm、アジア圏期待の強豪だった前チャンプのソムサック・シンチャチャワンを3RKOで切って落とした戦績、さらに想像される枯れ木のような風貌に似合わぬハードパンチャーとのことで、どんなボクシングをするのかと楽しみにしていた。これが、身も蓋もなく言ってしまえばリアル間柴(『はじめの一歩』)。ガリガリの体で、デトロイトスタイル。長いリーチから射程の長いジャブとフック、そして打ち下ろしの右。実際に見たら結構キショイ動きでした。ちなみに今回の試合は、この打ち下ろしの右が決め手になった。さらにスイッチがやたら巧みでスピードもあり、テクニシャンとしてもかなり完成度が高そう。間柴以上。想像だけど、この前の長谷川はベチェカにこの選手の幻影を見ていたのではないだろうか。
挑戦者のリカルド・カスティーリョは元ライト級王者のホセ・ルイス・カスティージョの弟とのことで、兄ホセがセコンドに。残念ながら兄のファイトは未見だが、浜田氏とジョー氏によれば、弟のファイトスタイルは兄とよく似たものだそうだ。弟は決定力に欠けるのが違いとのこと。
試合は射程の長い王者カバジェロの懐に入ろうとするリカルドが肘打ちや頭突きなどのラフなテクニックを多用したためか、王者がエキサイト。普段は自分の距離であるロングレンジで戦うらしい王者が、インファイトに応じて強引に挑戦者をねじ伏せにくる。これは挑戦者の狙い通りだったのだろうが、カバジェロが多少いいのを食っても揺るがなかったのが誤算か。むしろきついクリーンヒットを喰らい続け、徐々に失速。そして9R、カバジェロがコンビネーションでリカルドを半身に追い込んでおいて、完全に狙っていたと思しき打ち下ろしの右を即頭部にクリーンヒット。はっきりとぐらついたリカルドは、決めにきたカバジェロの下半身にしがみつき、苦し紛れに投げ飛ばしてしまい、そこで試合終了。TKOかタオルかと思ったら、ジョーさんによれば、リカルドのレスリング行為に加えて、この時兄の行為に何か不手際があったらしく、公式記録はリカルドの失格負けらしい。
カバジェロは強かった。これは長谷川との試合が見たい。あとちょっと気になったのが、クリスチャン・ミハレスがときどき使う、後ろ足を軸にしてコンパスのように前足の踏み位置を大きく変えるステップを、カバジェロも使っていた。ジョー小泉氏いわく、カバジェロのホームであるパナマの技術とのこと。


もう1試合は、WBAのUF王座とWBC王座のクルーザー級タイトルマッチ。現チャンピオンのオニール・ベルと、元チャンピオンのジャン・マルク・モルメックのリマッチ。これは、オープン・スコアリングシステムの悪い部分が如実に出てしまった試合だった。あと、地元判定*1
試合は序盤をモルメックが、中盤をベルが支配する形に。特に序盤は熾烈な打ち合いで、互いに一発形勢逆転を演出。ワルーエフが悪塩だったので久々に目にした迫力の打ち合いに、これぞ重量級、と新たな興奮をゲット。8R時点で公表された採点は、三者共に74-78で、ベルの中盤の追い上げがあまり反映されていない感があった。
しかし、9Rからがひどかった。個人的には未曾有のダルダル泥仕合。ヘロヘロのモルメックは、1Rとれば勝ちと踏んだのか、9〜11Rを怒涛の逃げ。まともにパンチを打たないばかりか、相手に背を向けて逃げる。減点しろよ。ベルはベルで疲れ気味でモルメックを捕まえきれず、相手の減点を誘おうとローブローを喰らった際に床に倒れ伏して悶えてみてと、どちらも塩塩の地獄絵巻を演出。これも重量級か、と欲しくもない諦念をゲット。
最終12R、モルメックは念には念をなのか、グローブのテープ直しで時間稼ぎ。さすがに最終回は前に出ようとしたが、一瞬でガス欠。何をやっているんだ。ベルも疲れており、押し気味にラウンドを進めるものの捕まえきれない。最後には、テープ修繕の時間カットを忘れていたと思しき30秒前倒しゴングで終了と、どこまでも締まらぬ試合。
で、採点結果発表シーン。試合直後は、ドロー防衛に持ち込めたとの思いでか笑顔だったベルが、「ユナニマス」という驚愕の単語に一瞬で欝に。113-115が二人に、112-116。12Rは割れる可能性もあるだろうが、9〜11はベルだろうと思ったが。もしや全員12Rをモルメックに振ったのか。おまけに一人はモルメックが背中を向けて逃げ回っていた3つのラウンドのどれかにポイントを振ったらしい。残念、というか、理解に苦しむ。

*1:試合が行われたのはモルメックのホームであるフランス