亀田の夏祭りを前に


逆境渦巻く中、長男興毅は入場演出に、次男大毅はピアノにかまけているとのことで、大丈夫なのでしょうか。三男和毅も帰国してきたそうですが、自業自得とはいえセコンドか控え室くらいしか居場所がなさそうですね。


相手の水準は世界王者クラスとまでは行きませんが、見方しだいでは今の彼らの力を見定めるよい材料になりそうです。


まず、興毅の相手はセサール・ロペス。


Cesar Lopez
http://www.boxrec.com/list_bouts.php?human_id=044451&cat=boxer


20勝(うち4KO)4敗でKO負けはなし。このデータから見えるのは、パンチのないテクニシャン、ただしKO負けもないことから、ある程度打たれ強い、です。
デビュー戦を除いては、負けた相手は三人は実力者揃いですね。試合にもすべてなんらかのマイナータイトルがかかっているようで、世界挑戦者決定戦レベルの舞台には上がっている。Gabriel Elizondoは世界挑戦経験こそないものの、ジョニゴンとホセ・ナバーロ以外に負けなし。ナバーロとはスプリットまで競っている。Glenn Donaireは今話題のNonite Donaireの兄ですね。弟が倒したビック・ダルチニアンのIBFフライ級に挑戦した経験あり。直近の試合相手であるIsidro Garciaは元WBOフライ級王者。
これらの三人にも、すべて0-3での判定負けはあるものの、ポイント差はおおむね中差程度に押さえ込んでいる。Boxrec上で見る限り、この三試合でダウンした形跡もないですね。

このように一定の評価が出来るとはいえ、前々回のEverardo Morales同様、世界の一流に届かなかった、という実績が出ている選手で、名目上の地位で言えば格下です。自分に世界チャンプ以上の力があると豪語するなら、KO出来ずとも、接戦してはいけない相手です。一発KO負けの危険性が低い、テクニック勝負のできるこの相手を持ってきたのは、良くも悪くも興行主の側がまだ興毅に期待しており、大事にしたいという印のように思えます。マッチメイカーの手腕に感心します。ロペスとしても、世界戦線生き残りをかけて全力でアップセットを実現させに来ると期待したいです。

今回興毅がKOを口にしないのは、前回の試合の反省と共に、相手の耐久力への評価もあると思います。倒せそうにないな、と。求められるのは、テクニック面で圧倒して、悪くても中差判定勝ちすること。前回のようなテクニックのかけらもない力と反則頼みの試合だけはしてはいけない。倒せずグダグダになったあげく、地元判定と謗られるような勝ちを拾うか、初の黒星、になるでしょう。

ここ最近はマナーだけではなく、東洋挑戦の頃の鋭いステップインが失われている等、もともと微妙だったボクサーとしての評価までも下降線に位置づけられることの多い興毅。彼自身が口にするテクニシャンへの脱皮と共に、鋭いステップインが復活しているのか、にも注目したいです。



大毅の相手はファーペッチノーイ・クラディンデーンジム。18歳と若い。

Fahpetchnoi Sor Chitpattana
http://www.boxrec.com/list_bouts.php?human_id=255211&cat=boxer


15勝(うち10KO)2敗で1KO負け。少なくとも、これまで大毅が相手にしてきたタイ人、インドネシア人とは戦績が違います。とはいえ、かませ犬のフィリピン人Lito Sisnorio*1にKO負けを喫し、日本ランカーの清水にもダウンを奪われて完敗するなど、テクニック、打たれ強さ共に不安が残るのも事実。

ただ、見る側としては、ファーペッチノーイのこうした戦績に期待したいところです。彼は少なくとも途中まで、大毅と同じ無敗の若手ホープだった。2戦目でWBCユースフライ級のタイトルを獲得し、弱い相手ながら13戦全勝9KO。それが、ミニマム級のオーレイドンにKO負けするような超格下相手にKOで初黒星を喫し、次の試合には海外でテクニシャンに弄ばれて、ほぼフルマークの判定負けで世界ランクも急降下。彼が失ったWBCユースフライ級王座を奪取した同僚のPanomroonglek(WBC1位)に大きく水をあけられた状態ですね。

いわば、大毅とは違い、挫折を経験したホープ。その彼が、同門の兄弟子が世界王者から陥落した国で、自身もただでさえ無気力試合が出来ない状況下で*2、どのような試合をしてくれるか。ポンサクレックだってキャリア序盤に無名選手に二敗している。実際みてみないことには分かりませんが、まだ若いこのファーペッチノーイが明日のポンサクレックである可能性もないとはいえません*3
ファーペッチノーイが元々スーパーフライ級である大毅のフレームと圧力を恐れなければ、白熱した試合になりそうな予感がします。むしろ、興毅より大毅の方が、初黒星の可能性は高いと思えます。このところの報道を見ても、一番地に足が着いていない感じを受ける大毅。ファーペッチノーイは戦績上は強打者であり、大毅は形の上では初めて戦意のある海外ホープ、それも強打者と対することになるわけで、案外緊張しているのではないかと言う気がします。彼は興毅以上に、苦しい試合の経験がないでしょうから。

*1:この選手は有名タイ人ボクサー相手のかませ犬道中の果てに、フィリピンコミッションに認可されないままに出場した試合でのKO負けの後、亡くなっている。ミスマッチや無気力試合が規制されるべき所以です。

*2:JBCが事前に無気力試合への警告を出しているため。

*3:ただ来日後の報道を見ると、ネット掲載分には戦意の高さが伺えますが、記者会見の様子を取材した東京スポーツには『ぎごちない動きの縄跳びを披露して引き揚げてしまった』などと書かれていたようで、不安を感じさせられます。