木村紺『からん』


ずっと読みたく思っていて、ようやく入手。今時手に入れようと思ったらネットで買えばいいんでしょうけど、なんとなく本屋で買いたい漫画だった。
あまり売られていないのが残念。面白いですよ!!!


講談社アフタヌーンで連載されている、古風なお嬢様女子校を舞台にした柔道まんが。
とはいえ、部員それぞれが柔道に求めるものが、本当に様々。限界を知りたいという求道的なものから、尊敬する強い先輩に認められたい、もあり、誘われたし気になる友達も入るなら私も、でもしんどいし怖いな、などなど。さらにはそもそも作中で言葉にされておらず今のところ推察することも難しいものもあり、そんなんよりわしの強さはどや!もあり。作品の背景には京都の新旧勢力の確執もあり、色々な伏線や奥行きが感じられて引き込まれます。


地味ながら多彩な人物群を束ねる主人公は、初心者を導く思いやりと社交性、自他を含む環境をより高みに押し上げるための腹黒さや客観性、そのどちらも溢れんばかりに持っている新入生。そこそこ恵まれている程度の体格と運動神経を楽しく鍛え上げているタイプで、寝技が得意と言うのは実にらしい。はっきり描かれているわけではないですが、京都の新興勢力の家柄の様子。
作品描写には、部活での苦闘、軋轢や京都の新旧勢力の争いといった厳しい部分と、力の抜けきったコミカルさが同居していますが、彼女の優しくも厳しい視線を通すことで一本筋が通っている。


こうした理性的な主人公と対置されるエキセントリックの固まりのような存在がいることも、今後の楽しみ。
旧世界の象徴である舞妓の見習いでありながら、高校で出会った主人公の導く柔道に全身全霊でのめり込む同級生の少女。生まれ持った図抜けた身体能力に極小体格(138cm35kg)、忘我的な性格、ナチュラルボーン孤立、全てが主人公のネガ。
体格経験メンタル全ての絶対的ハンデの中で光るなにかが、主人公の興味を引きつけて止まない様子。


しかし個人的に一番好きだし笑えるのが、全国ベスト4の実績を持ち、才能と身体能力の権化である女バンカラ部長の大石萌。お使いを理由に茶の席を辞そうとした下級生を脅して曰く、



『ぬんっじゃわれー!わしと茶ーしばくんそんなに嫌け?茶ー買うてわしにしばかれるけ?』


こうした台詞が似合う女学生キャラは枢斬暗屯子(『激!極虎一家』)以来。あれとはまた少し違うが・・・。


作者の前作『神戸在住』はアフタヌーンから離れていた時期だったので特に理由なく未読でしたが、読みたくなりました。


からん(1) (アフタヌーンKC)

からん(1) (アフタヌーンKC)

からん(2) (アフタヌーンKC)

からん(2) (アフタヌーンKC)