フレドリック・ブラウン、シャーリー・ジャクスン他『18の奇妙な物語 街角の書店』

 

異様な読後感を残す短編を指す江戸川乱歩の造語だという「奇妙な味」を持つ、変な話を集めた短編集。

 

またも最初のほうしか読んでないのか記憶が収縮してるのかわからんが、今回も最初の二つをよく覚えている。

ジョン・アンソニー・ウェスト「肥満翼賛クラブ」

旦那の太り具合をコンテストで争うことに執心する奥様方が組織するクラブの話。

コンテストの優勝者夫妻がその栄誉(=旦那をどちゃくそ太らせる)を得た経緯を、クラブの重鎮らしき女性が会合で報告する、という体裁になっている。

シニカルなユーモアのある文章が上手い。平山夢明系。以下は、筋肉質だった旦那がうまいこと肥満路線に乗った時期を報告する文章の引用。

あるがままの彼の姿を眺めると、肉体の鍛錬という馬鹿げた考えは別にして、なかなか魅力のある理想の旦那様だとわかるでしょう。愛想がよく、控え目で、知性のほうはさっぱり……。あんなに怒っていた町の女性たちも、すぐに二人の境遇を心から案じるようになりました。グレゴリーが穴を二つ広げてズボンのベルトをゆるめるようになったと、にこやかな顔でグラディスが報告にきたのもその頃です。

愛想がよく、控え目で、知性のほうはさっぱり……。名文

イーヴリン・ウォーディケンズを愛した男」

最愛の妻に浮気された男が、傷心旅行だとブラジル奥地探検に。凶事の連続で同行者は次々に脱落。ただでは帰れぬと一人先に進む男もアマゾンの奥地で死にかけたところを、謎の老人に助けられる。回復し、暇乞いを告げるも、いつもはぐらかされる。はたして彼は帰宅できるのか。