グロ数学小説『Ωの晩餐』がベスト、他もよしの良短編集(平山夢明『独白するユニバーサル横メルカトル』)


クールなタイトル・表紙に惹かれ、柳下毅一郎氏の推薦文『神です、神』に背中を押されて手にとってみたところ、えらく面白かった。後で知ったことだが、もともと都市伝説を題材にしたノンフィクション畑の人のようで、なるほどさかむけの如き不快感や不条理感を伴いながらの物語の展開が実にうまい。


ベストが世界初?のグロ数学小説『Ωの晩餐』。ヤクザのパシリに零落した数学徒崩れが、死体の脳を啜るうちに高度の知性を持つインテリになったΩ(オメガ)なる奇人の世話をすることになり、己の脱糞した巨大な汚物を「オムレツ」と呼ぶ優雅なΩの異能を用いてリーマン予想の証明に挑む。


わずかな差で、ラストの『怪物のような顔の女と溶けた時計のような頭の男』。強迫神経症との闘いの末に思い通りの夢を意識的に選択できる能力に目覚めた、拷問を生業とする男が主人公。美しい夢の世界と悲惨な強迫神経症の対比がよい。学校でも家でも虐待を受ける醜い少女が、最後の最後で辿り着く絶対的存在との邂逅と祝福のシーンが美しい『無垢の祈り』もよかった。他のどれもよい。傑作短編集。