マイラブまんが雑誌史

メールを整理していて、数年前に某メーリングリストに投稿したマイラブまんが雑誌史を見つけたので、かなり読みにくいが、記録のために転載しておくことに。当時は雑誌熱の枯渇に悩んでいた。今だ、これらに並ぶまんが雑誌との出会いは無し。あまり悩まなくなっただけ。先日まんが/現実の価値転倒を生ぜしめたまんがたちについて描いたが、これらの雑誌たちにも同じことが言える。90年代、特に大学〜大学院時代は、まんがと現実との境界が曖昧な状態で生きていたようだ。不憫な人と思うなかれ。幸せだった。


(A)印象に残っている掲載作品
(B)その時期の雑誌を象徴する(と自分が思う)漫画家
(C)コメント
(改行を整理し、事実の誤りを訂正し、註を付けた以外は当時のまま)



○創刊時(おそらく93年)から数年の『ガオ』

A:
迎夏生『ワンダル・ワンダリング』、
吉富昭仁『ローンナイト2』
大塚英志&堤義貞『東京ミカエル』
(打ち切り後10年越しに出た完結編と単行本の後書きを読んで、あまりのショボさに泣く。
大塚英志の作品が自身のマーケティング論の実践という話があるが、才能がないだけだと思う)
夢来鳥ねむ『緋翔伝』
島田英次郎『放浪見聞録』

B:迎夏生吉富昭仁

C:いわゆる少年漫画以外のマンガとの出会いがこの雑誌。
 隙間チック和製(和風ニアラズ)ファンタジーとの出会いもこれ。


○93〜98年くらいの『アフタヌーン』(講談社

A:
藤島康介ああっ女神さまっ』(単行本にして多分7〜10巻あたり)、
四季賞
小原愼司『ぼくはおとうと』、『菫画報』
◎ノモト・ユウ『プギ・ポンマリ』(単行本を手放したのは一生ものの誤り)
植芝理一『ディスコミュニーション』
(ごく初期と後期学園短編群。裏を返せば冥界編?はいまいちでした)
遠藤浩輝の初期短編
鬼頭莫宏ヴァンデミエールの翼』
四季賞受賞作は理想のデビュー作だと思ってたら違ったのか)
・澤田賢二『鍍乱綺羅威挫婀』
・垣野内成美『午後三時の魔法』
高橋ツトム地雷震』(シリーズ連載だった初期が特に)
・GONTA『地獄の家』
・小田浩志『ブルーミントホテル』

B:藤島康介小原愼司植芝理一

C:ガオを知った直後に読み、『女神様』の断崖下りレースの回でベルダンディーに轟沈。
 様々な情念の坩堝のような紙面に圧倒された。


○95〜97年ごろの『少年ガンガン』(エニックス

A:
衛藤ヒロユキ『魔方陣グルグル』
(旬は4巻くらいまでか。それ以降は絵が過度に丸くなって)
柴田亜美『南国少年パプワ君』
(真に衝撃的だった初期は単行本で後追い)
天野こずえ浪漫倶楽部
浅野りん『CHOKOビースト』
大清水さち『ツインシグナル』

B:衛藤ヒロユキ天野こずえ

C:不可思議なファンタジーギャグとゲームチックな奴と少年マンガ的作品との
 バランスがよく取れていたと思う。『グルグル』はその結晶のようでそうでない。


○95〜96年ごろの『ギャグ王』(エニックス

A:
三笠山出月『うめぼしの謎』
梶原あや『殺し屋ジョージ』
新山たかし『半熟忍法帳』
・原淳『奇笑天傑物語』
夜麻みゆき『幻想大陸』
牧野博幸『勇者カタストロフ』
石田和明『レニフィルの冒険』

B:三笠山出月、新山たかし

C:ドラクエ4コマで発掘した人材をメインに作った雑誌のはずなのに、
  もっとも面白かったのが関係ない上の2名というのがこの雑誌の栄光と短命を象徴していた。
  まあドラクエ4コマで一番面白かったのはバリイドドッグな柴田亜美だったんですが


9695〜99年ごろの『Gファンタジー』(エニックス

A:
堤抄子『聖戦記エルナサーガ
◎久保聡美『サリシオン』
・斎藤カズサ『東京鬼攻兵団TOGS』
天野こずえ『クレセントノイズ』
高田慎一郎『神さまのつくりかた』
上田信舟魔神転生
箱田真紀ファイアーエムブレム-暗黒竜と光の剣

B:久保聡美、箱田真紀

C:この時期のこの雑誌は、ライトSF&ファンタジーマンガ&ゲームとの
 コラボマンガ雑誌として、かなり充実した内容だったと今でも思っています。
 特にまいじゃー認定済みの『エルナサーガ』は名作。


○98年〜00年くらいの『ネムキ

A:
川原由美子観用少女
(もっとも、僕が買い出したあたりから休載がちに)
林正之『極楽りんご』
今市子百鬼夜行抄
TONO『チキタ☆GUGU』
・海ロ書房の短編

B:川原由美子林正之

C;これは雑誌としてどこにも属さない雰囲気そのものが好きだった。
  上の二人がいなくなって、スキマ感はそのままにつまらなくなってしまった。


○97〜99年くらいの『コミックビーム』(エンターブレイン

A:
永野のりこ『電波オデッセイ』
馬頭ちーめいブレイクエイジ
近藤るるる『新はいぱーあんな』
志村貴子敷居の住人
すがわらくにゆき『魔術っ子!海堂くん!!』

B:永野のりこ近藤るるる
C:志村貴子を除けば、ビームが今のビームになるために切り捨てた要素
(ゲームコミック的部分、ルサンチマン、アニメ&ギャルゲーヲタ)という感じ。
 この辺を担当してた編集者が抜けたとか。


○季刊だった頃の『ステンシル』(エニックス

A:
こがわみさきの短編
桜野みねね(表紙イラスト)
◎斎藤カズサ『南国動物楽園綺談』
天野こずえ『AQUA』
松葉博心に星の輝きを

B:こがわみさき天野こずえ

C:「少年マンガ&ファンタジーマンガの編集者&書き手が作る、男の子も読める少女マンガ」という試みは
  面白そうだったし、実際その方向性を象徴する桜野みねねのイラストが印象的だった季刊時代は成功していたと思う。
  思い返してみると『コミックハイ!』と似ている。山名さんが紙面にはまりそう。
  月刊化したとたん、お家騒動もあってデザインも内容も劣化した末に廃刊となったのは残念。
  こがわみさきと斉藤カズサはいずこへ*1


○ お家騒動直前の『ガンガンWING』(エニックス

A:
浅野りんパンゲア
箱田真紀ワールドエンド・フェアリーテイル
小島あきらまほらば
・久保聡美『陽炎ノスタルジア
綱島志朗ジンキ

B:浅野りん小島あきら

C:この頃は本誌より読めた。主力連載陣のほとんどがブレイドに移っているのに、
  そのブレイドがあまり面白くないのは何故なんだ。
  唯一WINGに残った『まほらば』はアニメ化だそうで。

*1:こがわみさきは活躍してるが、斉藤カズサは消えたままだなあ