ダイナミックグローブSP (127)


CSのG+で放送。メインは東洋太平洋フェザー級王者・榎洋之の世界前哨戦。


榎はタイ国内ランカー、クラープデーン・キャットグリーンを相手に、ジャブを中心に試合をほぼ完全にコントロール。彼の試合を見たのは初めてだが、たしかにジャブの威力は相当なもの。見る見るうちにクラープデーンの瞼が腫れる。それでもクラープデーンは積極性には欠けるが、タフネスの評価通り、簡単には屈しない。むしろ、榎の側に時折だが、不用意な被弾がある。そして4Rに二度のダウンを奪い、止めを刺しにかかった榎にクラープデーンの強烈なカウンターがヒット。榎の膝が完全に折れかかった。ラウンド終了ぎりぎりだったのが榎には幸いしたが、エキサイトしたクラープデーンがゴング後にパンチを数発放つ危ない場面も。


結局、榎が5Rに改めてペースを握りなおし、6Rに軽いアッパーでクラープデーンが諦めたかのように膝を突いて起き上がれず、榎のKO勝ち。


榎はおそらくこれで世界に乗り出すのだろう。派手さがないので、力を確信しづらいところがあるが、強力なジャバーは弱い相手も強い相手も同じように突き放して目をつぶして距離を奪うのが基本なので、そもそも外見では力を計り難いものだという気もする*1。強豪世界ランカーのナデル・フセインをジャブでねじ伏せた実績を信じたいところだ。WBAクリス・ジョンよりは、どちらかといえばWBCの池の方が隙があるか。池は防衛戦で洲鎌をKOした試合の規格外のパワフルさが印象的で、今日の榎のカウンター被弾を考えると危険もあるが、やはり峠を越えた選手だ。この階級は国内にもリナレス*2・粟生がいて、実力に人気・話題性を兼ね備えた彼らに注目を持っていかれがちだが、長年の実績を無敗で潜り抜けてきた彼にまず世界挑戦の機会が与えられたらよいなと思う。


あと、前座試合の中にいい選手がいた。小林秀徳というこれまたフェザー級の選手で、新人王を獲るなど10勝1分負けなしという素晴らしい戦績をあげていながら、眼窩底骨折で4年のブランクを作り、数度の手術とリハビリを経て、昨日が再起戦だったらしい。いきなり現在のフェザー級ホープの一人であろう、B級トーナメント優勝の実績を持つ小平選手と当てるあたりには、期待の高さとともに、「この相手に勝てなければ復帰しても仕方がない」という覚悟が伺える。それくらい、現在のフェザー級はタレントが多い。青空西田もフェザーのはずだし。

試合はその小林が、戦績の高さもうなづける動きとテクニック、旺盛な手数とスタミナで試合の主導権をほぼ掌握し続け、一発の迫力では相手に一歩譲ったものの、明白な判定勝ち。まだ体が自らのイメージについてきていないかのようなしぐさも垣間見られたが、1978年生まれ。まだまだ若い。負けた小平選手も、高い実績と長期ブランクの相手ということでファイトプランを立て辛い上に、やってみたらスタミナ豊富なテクニシャンで実質格上と、極めてやりにくかっただろうが、勇気ある戦いを見せていた。よい試合を見た。


しかーし。録画終了間際に他の録画設定をしたのがイカンかったのか、録画時間終了直後に謎のエラーメッセージが出て、このデータは再生出来なくなった。この2戦と、月間賞を受賞した実直な人柄の小堀選手の萌えリング退場シーン*3は見直したかったのだが・・・。

*1:そのせいか、強いボクサーもジャバーに負けた試合では弱く見えるという話をよく聞く。それではますますジャバーが不遇になる気がするが。

*2:リナレスは国内・東洋タイトルには関わらないようだが。

*3:ロングアングルでわかり辛かったが、退場時に新鋭選手と長々と先を譲り合っていたように見えた。