なんで日本ではインフレ目標はいつまでたっても待望されないの?


インフレ目標インフレターゲット)を知ったのは、たしか山形浩生クルーグマン紹介だったと思う。1998年の刊行だからもう10年以上前だ。
具体的なパーセンテージまで提示されてたかどうかは覚えてないけど、当時のどん底の状況に対する提言だったから、結構過激な数値が上がっていたかと。


それでも、マイルドなインフレを志向する金融政策こそ必要っていう提言と、効果を挙げている国があるという紹介は、高校までの社会科教育で『インフレ=悪』と刷り込まれた頭には新鮮だった。


これかな。他にも山形氏のページに関連論文あり。
http://cruel.org/krugman/liquid-j.html


で、2009年現在、日本はまたも未曾有の不景気に突入。

ここ10年のインフレ率ってどうだったのかなーと。

http://ecodb.net/country/JP/imf_inflation.html

ほほほ。常に1%以下、時々マイナス(デフレ)突入も。まさにデフレスパイラル


不思議でしょうがない。この10年、デフレの悪もいい加減浸透し、それに対してインフレ目標はさらに多くの国で採用されてる様子。
対して、10年たっても採用せず、デフレスパイラルに喘ぎ続ける日本。
今回のサブプライム不況でも、発生国を差し置いて最悪の状態に落ち込む日本。
そんなんなのに、今回の総選挙でもインフレ目標がさっぱり争点にならない、日本銀行の責任追及も盛り上がらない日本。
しまいには、はじまらないうちから、インフレ目標は無駄という結論が見受けられる始末。
なんなの?諦めてるの?


まずインフレ目標を採用してほしいよ。その上で、デフレ脱却のために出来ることを色々試せばいいだろと。


岩田規久男日本銀行は信用できるか』p191にある、ニュージーランドインフレ目標政策評価の枠組み。

  • 中期的(1年半程度)スパンで見たマイルドなインフレ率(現在は1〜3%に設定)の持続を約束
  • 約束が守れなかった場合、中央銀行総裁には説明責任が発生する。説明に説得力がなければ総裁罷免もある


目標達成の約束と、約束破った場合の説明責任、罷免。
中期的と言う但し書きも興味深い。べつに常に2%に貼付けろってわけじゃないんだから、短期的に大胆な政策も許容される。


他方、日銀には目標の約束も説明責任もないという。目標数値を設定すれば、景気対策に積極的に何やってんのか分からん日銀を評価できるだろ。
日銀には、インフレ率0%近辺でも物価安定してますよねおk、という本音が裏に隠れている様子だが。実際日銀はマイルドだろうがインフレは大嫌いと言うことだが。その0%おkがまず間違ってるというのが10年前から言われてることのはずだ。


民主党内部ですら、下のような動きがある。引用部分で省略した党上層部の鈍すぎる反応をみるに先は長そうだが。まだ始まってすらいないということか。

(前略)鳩山首相の側近であり、旧東京銀出身の小沢鋭仁環境相は昨年、「リフレ研究会」なるものを党内にひっそりと立ち上げた。「リフレ」とはマイルドなインフレで物価下落をとめる金融政策で、持ちかけたのは意外なことに道路問題の追及で忙しいはずの馬淵澄夫氏。元財務官僚の大串博志氏らも参加した。


日本銀行は信用できるか (講談社現代新書)

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クルーグマン教授の経済入門 (ちくま学芸文庫)

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