長谷川敗戦のショックが全く冷めねえよ(’A`)


こんなんだから粘着質っていわれんだよなあ。ここから素人がなんかムカつくこと書いてるかもしれませんが、夜中に長文乙、で赦してくだちい。


私の知る限りでは、期待感も内容も共に、国内史上最高の試合でした。にしてもモンティエル、強かったですね。

なんでか知りませんが、強豪でも所詮下の階級、それもドネアダルチの次、長谷川楽勝、みたいな見方も多かった試合でした。特に某所で。サーシャに比べたら雑魚とか。そりゃサーシャも強いけどさあ。


私の意見は、モンティエルは強豪中の強豪だし、調子の波はあってもここぞという試合の強さは異常。少なくとも、こと中間距離からちょっと入ったくらいの、コンビネーションを打ち合う距離でのハンドスピード、強打の当てカンではモンティエルが確実に長谷川を上回ると思っていました。なので長谷川が勝つには、体格、圧力と距離感の差でモンティエルを型にはめて、長めの距離から強打を突き刺すか(ロチャ戦)、超接近戦で変態連打を打ち込むパターン(ペレス戦)、いや、楽勝じゃないにしても、間違いなくこうなって、KOは難しくとも、長谷川の中差判定勝ちと思っていました。
ましてや、長谷川が一撃で効かされる姿など、全く想像していなかった。今でも心のどこかで、『前日突然取り替えたというグローブに何か細工が・・・流石にそれはなくとも、*1長谷川が親知らず抜いた時、アゴの骨に悪影響が・・・』等と、埒もないことを考えずにはいられないほどに。


それが始まってみると、距離が短いはずのモンティエルが、ディフェンスの巧みさと、反撃の鋭さで、長谷川に長い距離からの強打のコネクトを許してくれない。攻撃面でも、引き気味で手数では劣るものの、いざ打ち合うときの精度とナックルの返り具合に加えて、威力までも明らかに長谷川より上。驚きました。強いと思ってたけど、ここまで上手くて強かったの?って。


4Rまで、ポイントはどのラウンドもおそらくほぼ長谷川が取っていたと思いますが、
手数と圧力で攻勢を演出していた長谷川に対して、
モンティエルは一瞬の単発気味とはいえ、威力に勝るクリーンヒットを再三好打していました。
特に2Rは、終盤の打ち合いで長谷川のパンチを躱しながら二発強そうな左フックをクリーンヒットさせており、スローで見て身震いしました。
長谷川のいいパンチもあった気がしますが、私ならこのラウンドはモンティエルに振るかな・・・。


であれば、モンティエルは想像以上の『本物の、超一流の世界チャンピオン』で、一瞬で沈められた長谷川と彼との間では埋めきれない差があったのでしょうか?


そうかもしれないな、と思う気持ちもほんの少しだけあります。モンティエルは序盤長谷川に攻めさせつつ盤石のディフェンスを披露し、ポイントでは遅れをとってもダメージブローは許さず、要所で強打を打ち込みダメージを与え、拮抗した展開の中でタイミングを計り、一瞬で効かせ仕留めた。モンティエルの側からいえば、今回の試合は百点満点。ポイントはどうあれ、試合を支配していたのは俺、プラン通りに戦い、思ったより楽に勝てたよ、ビバメヒコ!で終わりでしょう。そう言ったかどうかは知りませんが。


ただそれでもやはり、長谷川は本人のいう通り、一瞬の油断で負けたのだと思っています。
止められるまでは、単発でもらうことはあっても、常に先手を取り、ポイント争いでモンティエルを上回ってみせた。この芸当が出来るのは、近隣階級の現役の日本ジム所属選手では長谷川だけではないでしょうか。
長谷川の見せ場はたしか3Rでしたね。2R打ち合いで遅れを取ったのを取り返すかのように避けざまにカウンターのフックを入れ、打ち合いの後、安全圏に逃げたつもりのモンティエルに大外からフックを好打。モンティエルが驚いた顔をしていたのに興奮しました。どうだ、これが長谷川穂積だ、って。本人でもないのに。

そんな長谷川本人がいう『油断した』というのは、本人に取って言い訳でも誇張でもなく、また客観的に見ても正しいと思います。もちろん、油断をしなければ絶対勝てていたとは思いません。1R早々にアゴを割られていたとすると、あのまま試合が続いてもいつか発覚しストップされていたと考えるのが自然ですし、そうでなくともいつかはモンティエルの強打をコネクトされていた可能性も捨てきれません。
それでも、アレは油断でした。明らかに気を抜いていて、モンティエルの突然の接近に全く対処できず、漫然と打ち合ってしてしまった。いろんなところでいわれているように、ウィラポンやロチャにやったことをやられてしまったのですが、それまでのように距離を切っておけば避けえた展開でした。


ただそれだけに、あの4R終盤を振り返って思うのは、長谷川は勝負を楽しみすぎたんじゃないかな、ということです。今回に始まったことではなく、真正ジム移籍以降の試合は、怖さ、というか強引さのさほどない敵に圧勝続きのせいもあるのでしょう。どこか、自分の技術を試す、スポーツ、演舞のような感じでボクシングをやっているように見えました。緊張感が感じられたのは移籍初の上に流血したマルドロット戦に、相手に怖さのあったバルデス戦くらい。ファッシオ戦、ロチャ戦、ペレス戦は、長谷川は余裕シャクシャク、相手が固くなっているのが端から見ても分かりましたし、マリンガ戦はスピードが違いすぎてお話しになりませんでした。
で、今回は相手が同レベルということで、どこか相手もそれに付き合って遊んでほしがってるような・・・。クリーンなグローブタッチの絶えない試合にこんな見方をするのはどうかとも思いますが、クリーンさとは別の次元で、キツい言い方をすれば、勝負に徹しておらず、モンティエルを甘く見ていた。
こういう書き方をすると私が今回の長谷川の試合ぶりに対する悪意の固まりのようですが、そうとも思い切れないのが長谷川の不思議な魅力ですね。こういう技術の競演を好むし、判定にも抵抗がないようだから、ボクシングをゲーム的に捉えているのかなと思えば、そうじゃない。無意識にせよ、意地でもダウンを拒むあの足とグローブ。息子の名前の入ったトランクスでダウンなんて絶対したくない、という発言があるらしいですが、本当にそう考えているんだな、と。試合展開上ダウンした方がいい場合があるなんてこと、理屈としては分かっているでしょう。イーグル京和なんて、不慮のパンチもらってダウンして慌てて立った後、自分から座り込んで休んだりしてました。でも長谷川は、そうしようとはかけらも考えないし、そういうシミュレーションもしないんだろうなあ。功利的にいえば、やはりそれはどうかな、休むべきときは休んでほしい、と思いますが、それでも、あの意地でもダウンを拒否する強い足腰と精神は、皮肉抜きで、素晴らしいと思います。でも、ロープ掴んでダウン耐えるのだけは止めてほしい。あれは偶々なのかな?


対するモンティエルは、どこまでも勝負に徹していましたね。ジャブを絶やさない基本は守りつつ、かつ静から動へは速やかに、いかに一瞬で長谷川にパンチをコネクトするか、それだけに徹していた。敵地ということもあるのでしょうが、長谷川が繰り返していた『強い者同士の戦い』云々というお題目はおろか、ポイントゲームにすら関心がなさそう。
まあ、ファイトスタイル、得意とする距離の違いがそう見せるだけなのかもしれませんが・・・。長谷川の方が中間距離を得意とするし、今回は自分のパンチも届きにくくなるのを甘受してでも、距離を長めに保っていたように見えました。1Rから効かされたせいかもしれません。
で、あの4Rの逆ワンツーから右、左の攻め。科学者の面目躍如の、これで倒すぞと計算し狙っていたのであろう一撃必殺コンビネーション。あの逆ワンツーは、それまでのラウンドでも狙ってましたね。で、スイッチしての左強打も、カスティーリョ戦で再三見せていた、とどめの十八番です。
そして効かせたと踏んだ瞬間のあの詰め。敵方ながら、ああ、もうダメだ、逃すなんて考えられないという感じでした。しゃがみ込みかけた長谷川をすぐさま詰めに入る表情の鬼気迫ること、追い足の鋭いこと、肩で顔をカチ上げて左アッパーを打ち込むえげつなさ、左がことごとく強打で急所を襲う恐ろしさ・・・。本当に、今までの相手とはモノが違う感じでした。あのラフだったペレスも、今回のモンティエルのように、ダウンしかけた長谷川にすぐさま襲いかかるような獰猛さは見せてくれませんでしたからね。単に足踏んだ負い目があったからかもしれませんが。


実は、落城直後の感想は、『もっとガンガン攻めていった方がよかったんじゃないかな』というものでしたが、考えを改めました。
長谷川が勝つには、それこそ本人が言っていたように判定決着を厭わず、ボクシングのトータルの技術で勝負し、一発もパンチをもらわないくらいのつもりで、完全に上を行く必要があったのですね。なんで考えが変わったのかというと、スローで見直して、思ったよりモンティエルが長谷川の攻撃に圧力負けせずしっかり捌いているのが分かったからです。力づくでどうにかなる相手じゃないと。長谷川が誰よりそれを感じ、慎重に距離をコントロールしているように見えました。そしてポイントを攫っていた長谷川の総合力に再注目させられたわけで。
それには12R一瞬も気を抜いてはいけないし、避けきれない単発強打を喰らっても耐えなければならない。
私の喜びは、長谷川がそれを出来る可能性のあるボクサーだということが確認できたことです。というか、これも今回の試合を見て初めて分かったことです。ここまでとは思ってなかった。ホント素人丸出しですね。長谷川は本当に素晴らしい。やはりボクサーとしては、今でも西岡を押さえて空前絶後の日本のエースだと思います。
ただ、再戦については、観たい気持ちはあるものの、やはり健康が心配なので、複雑ですね・・・。顎の骨折も、無理な減量の繰り返しで骨が脆くなっているためではないか、という疑いを抱いてしまうのですが、医学的に根拠レスでしょうか。減量で栄養がなくなると。骨からカルシウムが溶け出すという話を聞いたことがあるような・・・。


ともあれモンティエル、一瞬の速さで長谷川を上回り、パンチのキレも威力も異常。改めてスーパーフライ級でのダルチニアンとの四団体統一戦が実現しなかったことが惜しまれる出来。ダルチは『俺がボコッた兄貴と同スタイルの同レベルだから俺とやるのが怖いんだよ』なんてボロクソ言ってましたし、アレで私もモンティエルの評価落としたんですよね。でもホント勝負分かりませんね。カスティーリョ戦といい、強い相手とやるときの充実度は異常です。改めて戦績見直したら、ダルチに負けず劣らずKO勝ちが多いですし。
ダルチVSモンティエル、マイナンバーワンドリームマッチに躍り出ました。1R、どちらが相手に格勝ちするのか。ダルチ34歳ですから、正直ドネアより先にモンティエルとやってほしいです。だってダルチ、ドネアにはまた負けそうだからw


そして長谷川選手。より強くなっての完全復活を待ちます。

*1:これを下司の勘ぐりと言う!消したいけど消すに消せないので晒しときます