日本圏ボクサーよ栄光へ!(俺のクリス・ジョンがアメリカで目にもの見せてくれるぞ!きっと・・・たぶん・・・)


WOWOWエキサイト・マッチと、地上波でやるような日本ジム所属選手の絡む「日本圏ボクシング」の試合をそれぞれ観ていると、時々複雑になります。結局、エキマで最強と称えられているような選手だけが「本物中の本物」なんじゃないかと。


最初にそれを感じたのが、マーティン・カスティーリョVSフェルナンド・モンティエル。日本ジム所属の選手が誰も勝てなかったアレクサンデル・無如酢に二度土を付け、名城信男相手にカットのハンデを負ってなお、ベースのテクニックの優位で逆転寸前まで追い込んだ、これが世界最高のテクニシャンかと見えたボクサーが、モンティエルの前では何も出来なかった。


続いてクリスチャン・ミハレス。彼もまた日本からタイトルを奪い去った選手で、無如酢、ナバーロと日本に最強ボクサーとして訪れた選手とのサバイバルマッチに勝ち抜いて階級最強に手をかけたものの、これまたエキマ人気のダルチニアンに一方的に破れました。ミハレスの場合は未だモチベーションかコンディションに問題があったのではないかと言う疑念が抜けないとはいえ、試合を見返すとパンチ力、スピードといった基本能力、さらには華のある闘いぶりで、ボクサーとして優れているのはダルチニアンだと見るからに分かってしまう。
本物であるということ、それはダルチニアンに勝ったドネアにも言えることで、ドネアがダルチニアンに勝ったのは、距離を支配し、より速く動き、より強く的確にパンチを打ち、と、ボクサーとして単純に優れていたから。少なくとも『あの試合の時の』ダルチよりは。おそらくは再戦してもドネアが勝つと思っています。そして、この二人のステージは相当に高い。


プロ野球に例えると、ミハレスやカスティーリョが、3Aからプロ野球に来て活躍して、勇躍メジャーリーグに乗り込んだものの鳴かず飛ばずの選手に見えてしまうのですな。他にも、日本でイーグル相手に序盤に異次元の強さを見せたロデル・マヨールが、階級アップと長期ブランクの後&善戦したとはいえ、中南米の強豪チャンプに一発KOで沈められた試合もありました。イーグルの敵と言えばロレンソ・トレホも、タイトルマッチでは惨敗を繰り返しています。フィリピン出身で東洋無敵のロリー・松下もランディ・スイコも本場の強豪には敗れています。長期防衛を成し遂げているウィラポンポンサクレックら日本でなじみ深いタイの名チャンプは、本場の選手としのぎを削る道を選んでいません。数少ない例外はオスカー・ラリオスですが、彼ですら、同時代の頂点であるイスラエル・バスケスラファエル・マルケスよりははっきり落ちるでしょう。


パッキャオはどうか?彼のキャリアを振り返ると、まさに私が期待するようなそれです。若い頃日本で試合をして、WBCフライ級タイトルを「タイ人に勝ってタイ人に負ける」まことに東洋ボクサーなキャリアで通過し、陥落後に今も東洋最強レベルのウェートやナデル・フセインを叩き伏せ・・・ここで多くの東洋ボクサーが止まってしまうところを、そこからバレラを皮切りに本場のボクサーとの名勝負を量産していった。
しかし、私は「東洋ボクサー」であった頃のパッキャオを知らないのです。彼の名を知ったのがバレラ戦のアップセットで、試合の映像を初めて見たのが、憎き?エキサイト・マッチでみたモラレス3。悲しいかな、彼がフィリピン人ボクサーとして成し遂げた前人未到の業績を持ってしてなお、私の中では彼はどこまでも「本場のボクサー」の一人です。結局のところ私は日の浅いボクシングファンにすぎず、個人の歴史に依存する話になってしまうのですが・・・。


で、そんな私がみた東洋ボクサーの中で、誰よりも夢を持たせてくれる「日本圏ボクサー」が、未だ無敗のクリス・ジョン。私がみたボクサーの中では最強クラスのあの「ファン・マヌエル・マルケス」と、それ以外にもデリック・ゲイナーにもユナニマスで勝っているという事実。日本に来ては、武本先生を一方的にボコり、先日の榎戦では衰えの不安も抱かせたものの、あの強い榎の攻めをある時は正面から跳ね返し、ある時は捌く柔軟なスタイルに改めて感服しました。パナマのトップコンテンダーを一方的にKOなど、戦績も強さも凄まじい。ただし、マルケス、ゲイナーという本場組にはあくまで「自国開催での判定勝ち」であるところが、彼の「本物」評価に影を落とし続けてきました。

そのジョンが遂にアメリカ進出!このように、アジアに留まって長期防衛を果たした選手が、満を持して本場に乗り込むというケースは、これまであまりなかったのではないでしょうか。しかも相手はエキマ常連のロッキー・フアレス!
フアレスはバレラ、マルケス、ウンベルト・ソトという一流には全敗です。しかしオリンピック銀メダリストだけあって強く上手いです。マルケス戦は早い回のカットがありましたし、バレラ戦、ソト戦はクロスゲーム。しかもバリオスを倒して今登り調子と来てます。
ジョンがこの相手にどういうボクシングを見せるのか?もしかしたら、今までのアジアンボクサーのように、ただでさえスーパーフェザーでもやれるパワーがある上にテクニックもあるフアレスのワンツーと左フックをいいように食らって、KOされてしまうのかもしれない、とも思います。榎戦のジョンは、危ういところはなかったにもせよ、そういう脆さを伺わせる出来でした。
ただ、もしジョンがいつもの地上波の試合のようにフアレスをコントロールしてくれたら、私は自分にとってのアジアのヒーローを手にすることになるのです。楽しみです。


長谷川穂積が、西岡利晃が後に続いてほしい。出来れば内山高志も。彼ならソトともやれる気がするのですが・・・。