動いてるだけで


テレビばかりとはいえ,ボクシングを熱心に観るようになって二年ほど。優れたボクサーを眺めているうちに、彼らの動作そのものにも魅力を感じるようになってきました。

優れたボクサーは,何気ない動きだけで観る者の目を奪ってしまう。

例えばフロイド・メイウェザー

1:20あたりに彼の肩と腕を用いた神業ディフェンスが観られるのですが,何だか分かりませんがこのところ彼のショルダーブロックが妙に好きになって、意味も無く真似したりしてます。
あとメイウェザーについては、試合前も見逃せません。左手と右手で逆の胸を交互に叩く仕草も好きです。突き抜けた才能を誇示する仕草が実に絵になる。


試合前といえば,デビッド・ヘイも。

マカリネリ戦のゴング前、体をゆらゆらと左右に揺らす仕草が格好よすぎます。こういう何気ない仕草が絵になるのも才能だな,と思う。彼の場合は、体の美しさを含めたルックスのよさも半端ないですが。


日本人では,内山高志の試合中の佇まいが好きです。

アマトップの技術とパワーで、相手を突き放して一方的に消耗させる,パワフルなアウトボクシング
打たれ弱さを心配されることもある内山選手ですが,ウンベルト・ソトあたりの世界トップのパワーファイターでも,迎え撃って打ちのめしてくれるのでは、と夢を見たくなります。


こうした動作の魅力を教えてくれたのが、マーティン・カスティーリョ。

彼が自然にリズミカルに刻むウィービング,あれを格好いいな,きれいだな,と思ったのが最初。
次がクリスチャン・ミハレスです。以前触れましたが対川嶋2において4R終盤に彼が見せた攻防のセンス。


カスティーリョは先日,フェルナンド・モンティエルとの頂上決戦で敗れて引退を表明しました。共に目を奪うような美しいボクシングで魅せてくれるテクニシャン同士ながら、結果としてはカスティーリョの巧さをモンティエルの強さが叩き潰したような一方的な試合でした。

カスティーリョ贔屓かもしれませんが,この試合のカスティーリョは動きが重く、そのせいかヘッドスリップの動作も固い感じがしました。自分の型をなぞろうとしているかのように。
それでもあのダウンまでは鋭いコンビネーションでモンティエルをたじろがせ、ダメージが蓄積していく中でもカウンターを取るなど,随所に彼らしさをみせてくれはしました。


ただ、この試合を見てしまうと,たとえカスティーリョの力が全盛期からは落ちていたとしても,ボクサーとして優れていたのはモンティエルといわざるを得ないと思えますね。
穿ちすぎた見方かもしれませんが、最近のモンティエルのマッチメイクは、10年近い長きに渡ってWBOに君臨している自分の頭越しに台頭してフライ最強を囁かれているミハレスとドネアを牽制・・・どころか、『みんなが新鋭に盛り上がる気持ちは分かるけど,一番強いのは俺なんだよね』と実力を誇示しているように見えます。WBA陥落後もスーパーフライ級最強レベルの評価を維持していたカスティーリョとやって圧勝したのもそうなら、ミハレスと引き分け、ドネアにも完敗とはいえ中盤まで食い下がったマルドナドを、ドネアよりさらに一方的な内容で3Rまでで叩きのめしたのもそう。これは流れたようですが、次の相手にはミハレスに善戦したホセ・ナバーロが挙っていました。ナバーロまで一方的に叩きのめしていたら、ミハレス以上にナバーロに苦戦したIBFのキリロフも巻き込んでモンティエルの嫌がらせが成就していたはず。五度目の挑戦となるナバーロの心中を思うと趣味が悪いかなと思いつつ楽しみにしていたので、流れたのは残念でしたな。

ここまでやるのなら、いっそのことムニョスとやってほしかったり。まあムニョスとリターン無しでやるのは危険すぎるからまず無いでしょうけど、観てみたい。

で、今日の時点では,モンティエルとドネアは次戦の対戦相手どころか日程自体が不明となり,ミハレスは8月2日という日程は提示されているものの、相手が不明のままで一ヶ月を切っている以上こちらも流れそうな雰囲気。もしかしたら、三者のうちいずれかの直接対決の話が進んでいるのでしょうか。