ナジーム・ハメド


http://kameda3.seesaa.net/article/23137658.html


id:Jonahさんが紹介していたボクシング映像集をここ数日堪能中。


現時点でのパウンド・フォー・パウンドの呼び声高いメイウェザーについては、youtubeのまとめビデオを以前にも見て驚愕した経験があったが、その前のロイ・ジョーンズJr、そしてリカルド・ロペスについても、同様に素晴らしいとしか言いようが無い。見てて笑えてしまうのだ。


が、それよりも何よりも驚かされたのは、この選手の映像を初めて見たと言えば同意いただけるだろうが、ナジーム・ハメド。これまでも「和製ハメド」という言葉を何度か聞いた事はあるし、『はじめの一歩』のブライアン・ホークのモデルという話から、トリッキーでパンチの強いボクサーなんだろうなと思ってはいたものの、実物は私の貧しい想像力を超えてました。言いたかないが、こんなのの和製がありえるのか?この選手を見て、いよいよ笑いが止まらなくなった。深夜に。

圧巻がケビン・ケリー戦。1Rから倒され、その後も倒し倒されながら不利な感じが否めなかったのが、4Rに逆転KO勝ち。このボクサーの何がすごいって、弱みを見せた相手を逃さず、すぐにKOしてしまうこと。今まで見た中ではダントツ。
ケリーに対してもそうで、自分はいいパンチを食らっても、華奢な体には似合わぬ打たれ強さ(無類の体の柔らかさによるのか)で耐え続け、4Rで初めてケリーから流れを引き戻したかと思えば、そのまま一気にKOしてしまった。試合開始してグローブを交えたかと思ったらダウンを奪ったサイド・ラワル戦もその典型だ。相手は一応立ち上がり、ガードを固めて回復を図ったのだが、よく見ているというか、横から打つぞと脅してのアッパーというパターンを2回繰り返して1RTKOしてしまった。

あと、ハメドは先日車で150キロだか出した末に事故を起こしたという逸話のせいもあってか、ダーティなイメージを感じさせるが、ケリーとの試合直後、ケリーに歩み寄って熱心にまくし立てているのが印象的だった。雰囲気から察するより他は無いが、当時無敗だった彼を苦しめた相手を大いに称えているように思える。まあ、先日購入したボクシングファン必見のムック『あしたのボクシング Vol.2』(百夜書房)で、亀田のランダエダ戦最終ラウンド終了後の勝利アピールの無さの反例として紹介されていた、ロベルト・デュランが最終ラウンド終了後に勝利アピールするレナードを突き飛ばしたという逸話から海外一流ボクサーのハングリーさを鑑みるに、「どうだ!お前なんて敵じゃねえんだ!わかったか?わかってんのか?わかったのかよオイ!どうなんだよコラ!!・・・」と延々と己の優越を誇示しているという可能性もないではないが、やはりそうは見えない。


しかし、こういうボクサーたちを見てると、日本のボクシングを語る際によくある、人気&試合の面白さ/実力の二分法がつくづく悲しくなってくる。長谷川穂積は、その枠組みを蹴散らせるボクサーになってくれそうな期待が出来るが。徳山も新井田も素晴らしいボクサーだが、試合の華となるとどうしても疑問符がついてしまう。負けてもいいから面白い試合をしてくれ、などというアホなことをいう気はないが、やはり実力のみを基準にすると、選手のスタイルによる人気の限界というものはあるのだと思う。そこを補うのが協会なりジムなりの演出になるのだろうが、特に徳山はその点で不幸だ。彼の実績と、亀田と違って世界の一流どころにも評価されるスキルなら、それらしい煽りも出来ようもののように思えるのに。ホセ・ナバーロに完勝という偉業を成し遂げてもなお、一般的な知名度という点では、格闘技界どころかボクシング界でもワン・オブ・ゼムでしかない。


そして、現在の日本で一般的には「人気&試合の面白さ」でも「実力」でも筆頭を走っているというイメージがある亀田興毅については、こういう映像を見てしまうとなおさら、「人気はともかく試合はつまらないし、実力はまだものたりない」という、むしろ先の二分法のいずれでもイマイチという感想が出てきてしまう。ガードのみのディフェンスとプレスからのカウンターとボディ攻撃という単調な戦法は見ていて退屈だし、実力にしても体調のいい世界王者クラスの前では遊ばれてしまうことが先日のランダエタ戦ではっきりしてしまった。あとは、格下やロートル相手に楽勝KOするカタルシスとやらしかないのだが、そんなものの何が面白いのか。