スーパーライト級10回戦 ○日本9位 亀海喜寛(帝拳)4RTKO 近藤康弘(角海老宝石)●


久々のダイナミックグロープSP視聴。日本スーパーバンタム級のタイトルマッチである下田Vs塩谷戦も魅力的なカードだが、まずはこの選手、亀海喜寛を観たかったから。


その理由は豊富なアマキャリア、5戦5勝5KOという戦績もありますが、大きな理由が二つ。
一つは、彼のblogから伺われる高いプロ意識、それも昨今のボクシング界で強調されがちなショーマンセンスとは一線を画するそれに惹かれたからです。この選手の試合を見てみたい、と。たとえば、今日の試合を前にしたblog。

僕がアマチュアボクシングの全日本チャンピオンからプロ入りしたので、よくエリートボクサーだのなんだのって言われますが、僕は昔から才能にも恵まれていなかったし身体能力も低かった。

ただ他の人と違ったのはボクシングの事をいつも考えて、奥深く、客観的に考え、出来るだけ人よりも効率よく固定観念を無くしていられるようにしながらハードな練習をしてきただけです。 アマチュア時代に共に練習してきた奴らならわかります。僕はいつも泥臭くてがむしゃらな練習をしていたってことを。


プロ志望だからこそ、まずアマで上を目指すことを選んだ。試行錯誤し、キャリアを磨いてきた。有名高校・大学ではないところから、実績でアマタイトルと帝拳の高評価を掴み取った。エリートとみなされがちな自分を『雑草ボクサー』と定義しています。


二つ目は、彼が帝拳の選手であること。アマエリートをかき集めては、伸ばしきれないという悪評判が付きまとう近年の帝拳。規格外の金の卵であったホルヘ・リナレスが久々に世界タイトルをジムにもたらしましたが、他の選手にもリナレスに続きうる存在がいるのか。


試合内容は、大きな期待を抱かせるものでした。相手の近藤はノーランカーながら充実した戦績を持つ選手。亀海はその近藤にほとんどなにもさせなかった。ディフェンスへの高い意識を伺わせる、リカルド・ロペスばりのコーナーでのガード調整と、高いガード。ワンツーを軸にした攻撃と、相手の左にかぶせる右クロスの精度のよさ。打ち終わりの位置取りへの意識。上下の打ち分けも出来ていた。ベーシックな部分を鍛え上げているように見えました。そして右の決定力。TKOを決めた4R、最初のダウンは右クロス。この時点で残り20秒足らずだったのですが、きっちり詰めて、右で再度ダウンを奪い、レフェリーストップ。
課題は、まだひ弱に見えるフィジカルのよりいっそうの向上と、帝拳の選手が課題として指摘されがちな、「ワンツーの次」でしょうか。リナレスはワンツーの後の返しの左フックも、ショートも打てる。帝拳としては一足飛びに無理にそこまでさせず、一歩一歩育成していくつもりなのだろうという気もしました。リナレスがそうだったように。


このまま日本タイトルも取れそうな勢いを感じましたが、この階級はチャンプが別格。木村登勇。アマから今日に至る試行錯誤、その中で自分の頭でファイトスタイルを鍛え上げてきたというのは、木村登勇も共通です。むしろ、圧倒的な強さで日本タイトルV10、フィジカルの充実もあって、現時点では亀海より上でしょう。無理に急がずに、世界を見据えて鍛えていってほしいですね。


あと、この試合では珍しいものが見られた。クリンチに割って入ったレフェリーに近藤のパンチが入ってしまい、レフェリーが足にきてしまって退場→交代。しかしこの退場したレフェリーは動きが悪く、クリンチ状態になってもブレイクが無駄に遅く、両者がクリンチ後のパンチの打ち合いを余儀なくされ、一歩間違えると泥仕合につながりそうでひやひやさせられた。この惨劇?も、ブレイクのために間に入ったさいに亀海の体を抱きかかえるようにして、近藤に背を向けながら両者の間に入ってしまったところを、近藤のパンチを後頭部に食らうというもので、入り方もまずいし、そもそもがご自身のそれまでのブレイクのタイミングの遅さが招いた事故に見えた。幸いにして、交代したレフェリーはきびきびした動きで好感が持て、試合も締まりを取り戻した。ストップのタイミングも妥当。