東洋太平洋バンタム級タイトルマッチ ○ロリー・松下 12RTKO 三谷將之●


スカイAでのテレビ放映があったので、初生観戦を保留したのですが、これがなかなかよい試合で、鮮烈な幕切れもあり、複雑な気分にさせられました。屈。


前半は判断に迷うラウンドの連続でしたが、どちらかといえばクリーンヒットを当てていたのはロリー。長い距離で闘おうとする三谷の左ジャブに右を被せ、距離を詰めてフックとの中間のような軌道の左アッパー、これらがよく三谷を捕らえていました。後半にその差が現れてきて、三谷の鼻血もあって、徐々にロリーペースに。三谷はボディに活路を見出すも、ロリーを失速させきれず。
最終12Rを迎えるころには、判定でもロリーという感じでしたが、それでも三谷はせめて判定に希望をつなげようとしてか、12Rは丹念に左フックをよく当てていたと思います。しかしそこに、ロリーのすばらしいコンビネーションが炸裂。威力十分の右ストレートでガードさせておいて、空いた顎に、半ば地面に平行な角度で押し出すようなコンパクトな軌道のアッパーで三谷からダウンを奪います。


三谷が立ち上がり、足を使いながら距離をとるしぐさをみせ、ロリーにも危険を冒してまで倒し切る余力はなさそうだったのでこのまま判定かと思われたのですが、ロリーの強烈な左フックが三谷の顔面を揺らしました。足がグラグラに揺れる。三谷は完全に効いてしまい、解説者の悲鳴。ロリーが怒涛のラッシュ。パンチが的確に三谷を捕らえ、二度目のダウンを奪った時点でレフェリーが試合を止めました。倒したロリーも勢いあまってコーナーロープに突っ込み、そのまま半周してリングに突っ伏して喜びをぶつけた後、仰向けになりしばらく動けない。それほどのすさまじいラッシュ、そして熱戦でした。


ロリーはあのツニャカオを破ったのがフロックでないことがよくわかる強さでした。ツニャカオほどの身体能力はなさそうですし、打たれ脆さがあり、ボディとスタミナにも難ありという評判で、どちらかというと平均的な能力の中堅クラスの東洋王者だろうか、という印象でいました。
それが、一見したところでは強さが分かりづらいのですが、体は分厚いし、パンチも攻め方も多彩。半ば威圧のためでしょうが、強烈なロングアッパーも打っていました。一発があるとはいえませんが、当てるのはうまいし、今回の詰めは圧巻でした。
スタミナについては、今回の試合でもたしかに後半は表情にもはっきりと疲れが伺え、ボディを嫌がるそぶりも見せていました。それでもむしろ、そうした弱点をカバーするだけの高い戦意と追い足を12Rに渡ってみせられてしまえば、弱点と決め付けるのも難しいです。
打たれ弱さについては、階級を上げたのが功を奏したのか、あまり感じさせられませんでした。そもそも今回はあまりクリーンヒットをもらわなかったようですが。
正直なところ、中堅クラス、という印象は覆らないのですが、そう思う自分に見る目がないのかもな、と思わせられるような実戦派の強さでした。


それにしても、特別に動きが早いわけではないと思うのですが、先に触れた被せる右と左アッパーに見られたように、相手のガードに隙ができるタイミングを突いて打ち込むのが実にうまいです。これはロリーに限らず、イーグル、内藤*1といった、肉体的なスピードとパワーだけではなく、フェイントや距離感の操作を使った泥臭い強さを見せる東洋圏の強豪選手の特色でしょうけど。それだけに、WOWOWで観られるような、一見すれば分かる華やかな強さを見せる本場の選手と、これらの選手との試合が見たくなってくるのです。


三谷は日本人離れした長い手足とスピード感で、さすが注目のホープと思わされましたが、今日は距離の奪い合いで後れを取り、ボディブロー以外はいいところを出せないままに敗れてしまった印象。やはりボディだけではポイントを取るのは難しいし、おそらく判定でも難しかったでしょう。

*1:ボクレポさんによる内藤がポンサクレック戦で用いたさまざまなテクニックの解説には心底驚かされました。どうやらやられたポンサクレックも、自分が研究されて敗れるべくして敗れたことを感じ、納得しているようです。睡眠薬の過剰摂取という話を置けば。