新井田、完勝


WBAミニマム級の世界タイトルマッチ、驚いたことに、と言うと失礼ですが、スコアも117-112が二人に、117-111が一人というスコアどおりの、ほぼ新井田の完勝でした。新井田が勝つとは思っていたのですが、競った試合になるのではと予想していたので。


序盤は接近戦を挑む新井田の打ち終わりを狙ったゲホンの右が怖かったのですが、新井田は4R以降、出入りでゲホンの攻撃をはずしつつ。印象的なクリーンヒットを積み重ねていきました。接近戦での体をつけての打ち合いもそうですが、ゲホンの一方的な距離である遠距離から一歩入った中間距離でも、有効打を積み重ねました。これは運動神経に優れていないと出来ない。左の四連発、体を入れ替えざまの右など、印象的なパンチがいつにも増して多かったです。新井田はこれまでの試合でも、結果はともかく、ところどころで日本人離れした優れた運動神経が伺える、目を奪われるような動きを見せてくれたものですが、今日はそれがかなりいい形で現れました。
12Rフルに攻め続けた姿勢もよかったです。こうした中差をつけた試合の12Rなんて、流しても誰も責めないでしょうが、最後までKOを狙いに行っていました。それも、万一のリスクを回避する理性を保ちながらという感じで、安心してみていられました。贅沢を言えばラッシュ、KOを見たかったですが、そこまでさせないゲホンも強かった、ということなのでしょう。
結果として判定にはなりましたが、スリリングで面白い試合でしたし、これまでの世界戦で不完全燃焼の世界戦を続けていた新井田の、トップコンテンダーとの試合であることを考えると、小さな傷でしかありません。それに、ベチェカに勝った長谷川もそうですが、このレベルのやりにくい相手をこれだけきっちり押し切れる選手は、世界でも他にそういないでしょう。
ゲホンは試合中に左肩を痛めてジャブが出せなくなったとのことでしたが、それにしても無策ではありました。11Rに多少荒々しく出てきましたが、今日の新井田を脅かすほどのものではありませんでした。


それにしても、やー新井田、試合後のインタビューでは実にうれしそうでした。素直に『応援よろしくお願いします』という言葉が何度も口をつく新井田に、それに歓声で答えるファン。こんな新井田も観客も初めてじゃないでしょうか。口ではまだまだとは言ってましたし、それも本音なのでしょうけど、1位の相手を再戦で明白に片付けて、しっかりとした手ごたえがあったのでしょう。なんと対抗王者のイーグル京和がリングに上がり、二人で肩を組んでポーズ。統一戦の明言はありませんでしたが、盛り上がるシーンでした。


統一戦ですが、今日の新井田をみて、イーグル相手でも十分試合になる、とは思いました。それでもイーグルが有利と見ますが、イーグルと先が見えない試合をやってくれそう、という期待が出来るだけでも、すごいことだと思います。正直なところ、今のイーグルがディフェンスに比重を傾けて試合をしたら、揺るがせられる相手がミニマム級でいるのか?と疑念を抱くくらいでしたから。おそらく、相手がマヨールでもトレホでも、再戦があれば明白に勝つでしょうし。