世界タイトルマッチもいろいろ


ラファエル・マルケスVsイスラエル・バスケスWBCスーパーバンタム級タイトルマッチは本当にすばらしかったです。急所を的確に狙う技術を持った者同士の、一歩も引かない打ち合い。たしかにKOだけがボクシングではないですが、最高レベルの技術を持った者同士がリスクを踏み越えて打ち合う様は壮観であり、ボクシング観戦の醍醐味の一つの頂点ではあります。
結果は序盤から押し気味に試合を進めた挑戦者バスケスが、王者マルケスの必死の抵抗を一気に押し流すような壮絶な6RTKO勝利。


かと思えば、続けて放映された対抗王者のWBAカバジェロの防衛戦が逆の意味ですごかった。
13位のベテラン挑戦者ラシエルバは、格下と舐めきった王者カバジェロがラフに攻めてくるところを、こちらは半ば作戦であろうダーティーなテクを絡めたラフさで対抗。ヘッドバッドやクリンチ際の後頭部打ちを織り交ぜながら、単発ながら飛び込みざまの左フックを決める。ジョーさんが評価していたが、下位のわりにディフェンスがよく、うまくカバジェロの攻撃をいなしている。
対するカバジェロは相手への苛立ちと軽視からなのか、なかなかまともなボクシングをしようとせず、フックもストレートもジャブも前戦で見せたしなりを欠いた乱暴なものに成り下がりがち。ときどき思い出したように長いパンチで突き放しだすラウンドは取るのですが、次のラウンドはまた相手の接近を許し、クリンチの応酬の中でパンチを食らう。
結果的に互いが交互に取り合うような形で試合が流れていく。ラシエルバが頭突きで1ポイント減点されているとはいえ、ポイントも接近しているはずなのですが、カバジェロは集中力を取り戻せず、自分もプッシングなどに走る始末。レフェリーは、もみ合い押し合いゴング後も殴り合いかねない素振りを見せる二人に注意を与えるのに大忙し。最初のうちは笑えましたが、延々続くとさすがにダレます。危険ですし。
ジョーさん『今日のカバジェロが見失ってるものはね、距離でしょ、タイミングでしょ、そしてバランスですよ』・・・何も残ってないじゃないですか。高柳アナも『いっぱいありますね。あと、理性も見失っているかもしれません』

結局、終盤を手堅く抑え、12Rにはこの試合唯一と言えるダメージング・ブローを打ち込んだカバジェロが逃げ切る形でユナニマス。しかし、終盤次第では『泥仕合の末の番狂わせ判定陥落』という喜ばしからぬ結末の可能性も十分にあった試合でした。ダーティさも目立ったとはいえ、うまく闘ったラシエルバを褒めるべきなのか・・・。