マルケスVSノーウッド


メイウェザー戦選手との対戦が決まりそうなマルケス選手。ここ数年の試合の中でもパウンドフォーパウンド対決にふさわしいのは確かながら、マルケスファンとしては思い出してどうしても心配になってしまうのが、ノーウッド戦なんですな。メイウェザー選手のスピードとファイトスタイルを考えると、もしかして、ものすごく相性が悪いんじゃ?

当時の状況はよく分かりませんが、マルケス選手が無冠の帝王と呼ばれていた時代、長いトップコンテンダー時代を経てようやく実現した試合だという。相手のWBAフェザー級王者フレディ・ノーウッド選手も当時無敗でクソ強かったとはいえ、マルケス選手がNABOのKO防衛を続けていたことといい、その美しく完璧に近いファイトスタイルといい、戴冠を期待されたのではないでしょうか。


NABO防衛戦のうちの1試合、ファン・ヘラルド・カブレラ戦。こんな試合が放映されていたとは羨ましい。若きマルケス兄さんの格好いいこと(いや今も格好いいですがM字系人間の希望的にも)。あと少し驚いたのが、解説の高橋ナオト氏が、大興奮で当時のマルケス選手の強さを解説していることです。

1Rは冷静に、

  • リズムは正当派なのに、やりづらそうな感じを受ける
  • 理想的な足を使う選手。相手のパンチはブロックやパリーじゃなくて足で躱すのが理想だが、そういうボクシングをやってる
  • 距離感とジャブがいい

という解説。それが、2Rには、余りの距離感の素晴らしさに引き込まれたのか、口調が熱を帯び始める。

  • ボディブローに「うん」と感嘆(それをすかさず拾い、意図を問う実況担当もよい)
  • 凄い距離感がいい。自分の強いパンチが当たり、相手のパンチを喰わない距離を維持してる
  • 下手な選手じゃパンチ当たんない
  • この距離感でやってるうちは当分負けない
  • パンチがキレている

と絶賛。それでも、

  • 強い弱いじゃなく、負けないボクシング

という、まだ受け身気味の感想でもあります。

3Rには足の動きに着目。

  • 足の動きが凄い。フットワークと言うより、距離感を量るための足
  • 足で相手のパンチが当たらない距離を測ってる

それが、4Rで序盤からマルケス選手が効かせるのですが、

  • おおー、スゲーアッパーだ

その後のラッシュの間は言葉が出ない様子。で、ストップ直後

  • いやー、強い(笑)!強いっすねー、これは本当に、強い!びっくりしちゃった、あんまり強くて
  • 効かせた後の詰めの鋭さ。強いっすよこの選手は
  • ラッシュ時にも距離感が凄い。一番強いパンチが当たる距離でやってる。自分のパンチの生きる距離をよく分かってる。強い!

もう凄い、強いのオンパレード、大絶賛。

凄い、強い!を熱く連呼しつつ、その凄さのよりどころも解説する。素晴らしいボクサーを見付けたという素朴な喜びと、このボクサーの素晴らしさを伝えたいと言う熱意にあふれているこの解説も聞き所。距離感の一点張りに終始しているきらいはあるのですが、こういう熱意を伴った技術解説というのは、単なるアオリと冷静な解説に分裂してしまいがちなボクシングの実況/解説に欠けがちだよな、と思いました。


それなのに、ノーウッド戦は、結果はポイント的には完敗。



内容はと言えば、一瞬のスピードに勝るノーウッド選手に、打ち終わりのカウンター狙いを徹底されたのですね。決して打ち合おうとせず、自分だけがパンチを当てる状況だけを望み、実際それを貫徹したノーウッド選手の前に、得意の連打も出せずじまい。決して圧倒されたわけではないものの、判定では負け。

もう一つのポイントアウトされた試合であるクリス・ジョン戦も、地の利を得た相手とはいえ、スピードのある相手に打ち合いを拒否され、距離を支配しきれずに試合を終えポイント争いに破れたもの。

近年のマルケス選手が若い頃のパーフェクト超人スタイルからやや被弾覚悟の攻撃型にシフトしたのも、これらの試合の苦い経験あってのことでしょうし、当時のままではないでしょうが。