イーグル引退


新井田の痛ましい陥落と、挑戦者の強すぎる強さを見せつけられてからずっと、それでもイーグルなら勝負は分からない、パワー負けせず接近戦でショートが打てる彼なら、と考えていたわけですが・・・。その彼の復帰の可能性が閉ざされた。眼疾では・・・。


去年の今頃、充実を取り戻したイーグルと上り調子の新井田の間で階級最強を決めようという気運が盛り上がっていた頃は、まだBoxrec上だけの存在だった、WBA新王者ローマン・ゴンサレス。規格外のパワーとテクニックの融合という、去年までイーグルのものだった賛辞が、今はイーグル以上の熱意で彼に向けられている。それどころか、古今無双のはずだったあのリカルド・ロペスと同列に評する声すら多い。頷かざるを得ない。ボディ攻めを基点とした堅実かつ重い攻撃。新井田を1Rから恐慌に陥れた角度多彩な左と強い右ストレートのコンビネーションと鋭いアッパー。急所をすっぽり隠して揺るぎもしない固いガード。ロペスとはタイプが違うが、どんなレジェンド相手でも戦えそうな、リングの上に現れた最強の形の一つだと思う。


たしかにイーグルにはああいった凄みはない。ただ、彼のファイトスタイルには端正さがあった。精神的に苦しい状況で手足の速いオーレイドンには破れたとはいえ、まだ力を残している、ように見えた。ローマン・ゴンサレスと対峙して勝負になるミニマム級ボクサーを第一に挙げるなら彼だろう。見たかった。暫く興味を失っていたボクシングに再び引きつけられたきっかけが彼の世界タイトル初防衛戦、終始攻めつつも相手のクリーンヒットを1発しか許さない完勝だった。眼疾を頷かざるを得ない、ロデル・マヨール、ロレンソ・トレホ連戦のタフな勝利。ありがとうございました、と、言うしかないのか。


ローマン・ゴンサレスは、遠からずライトフライに上げる、いや、戻るだろう。その前に、他にもいるミニマム級の本物と勝負してほしい。第一候補は可能性が限りなく低いのを承知で、フィリピンのWBO王者ドニー・ニエテス。


手足が長く、ベタ足気味なのに打たせず打つ。異形のファイトスタイルだが、強い。無敗のタイ人パワーファイターを押し切って戴冠しただけはある。続いてやはりオーレイドンか。
選手層の薄さを批判されるが、トップには才能あふれる選手が集っている、と思い見続けて来たこの階級。天才よ、席巻するならとことんやってくれ。
ライトフライに上げた時は、マヨールとの試合が見たい。イーグルに破れるまでは『世界王者より強い東洋王者』と呼ばれていたマヨール、今のまま国内王者では終わらないだろう。