アンドレイ・コテルニク VS マルコス・マイダナ


スプリットディシジョンでコテルニク選手の勝利でした。
コテルニク選手は素晴らしいですね。技術も高いのですが、自分のボクシングを貫徹する意思、持てる技術を使い通す意思が。

まず、相手マイダナ選手の25戦全勝24KOという戦績は伊達ではない。尋常じゃないパンチ力が映像と音からでも伝わってきますし、おまけに、その重いパンチをあらゆる方向から空いているところを突いて入れてくる嫌らしさまである。コテルニク選手の、初回から極度の集中を感じさせる、鬼気迫る追いつめられた表情からもそれが伝わってきました。

コテルニク選手のファイトプランはいつも通り。鉄壁のガードでパンチを撥ね除けつつ、隙あらば反撃して、確実に有効打を叩き込む。書くのは簡単ですが、とくにマイダナ選手が元気な序盤では、ラウンドを通じて重いパンチに晒され続け、逆に反撃のチャンスは1R中に1回あるかないかでした。コテルニク選手の凄いところは、この序盤をほぼ完璧な形で凌いでみせたことでしょう。
そこまでやって「序盤はイーブンかややマイダナ優位」であるところにマイダナ選手の恐ろしさがあるのは確かです。3Rまでにほとんどの相手を倒している戦績が頷ける攻撃力。あの攻撃に晒されては、たいていの選手は序盤はフルマーク獲られてもKOだけは逃れてなんとか生き延びるのが関の山、それで御の字じゃないでしょうかね。それすらかなわないからこそのKO率96%。

中盤からマイダナ選手が多少失速し、徐々に徐々にペースをたぐり寄せていったコテルニク選手。有効打の比率もさらにコテルニク選手に傾いていく。それでも、表情がキツそうなのはコテルニク選手なんですね。ガードの上からの衝撃に加え、隙間に入って来るアッパーのダメージ、張りつめた精神の疲労も伺えました。対するマイダナ選手は打たれているものの、疲れが9割以上と言う感じ。
攻撃の比重を強めたコテルニク選手に、陣営から集中が呼びかけられていました。果して、9Rはかなり危ないパンチを貰ってしまう。アッパーに加えて、ここまで避け続けていた強いストレートまで貰って、多少ながらはっきりと、効いた素振りを見せていました。それでも、相手の打疲れに乗じてラスト10秒にヒットを奪うハートの強さ。逆にマイダナ選手は、ここで攻めきれなかったことが響いてしまいましたかね。

10R、ジョー小泉さんがマイダナ選手をベタ褒めしていましたが、僕はむしろコテルニク選手に感心しました。前のラウンドにラッシュされかけて、体力的にはかなりキツい状態で、改めてガードを固め直し、被弾を最小限に抑えながら、多彩なパンチで確実にクリーンヒットを取っていく。このラウンド、マイダナのポイントなんですか?本当に?

12Rも10Rと同じような、コテルニク選手の一種異様な粘り腰が光りました。このラウンドはマイダナ選手がプレッシャーをかけてビッグパンチも入れており、コテルニク選手にますますダメージの色が濃かっただけに、僕の目から見てもポイント的にはマイダナ選手かなと、ただ、コテルニク選手、一方的になりかけるところを、体を上手く入れ替えてクリーンヒットを取り返し、打ち合いの中でカウンターを取る。たしかにマイダナ選手のパンチと比較すれば軽いです。それでもこの、自分がどんなに効いていようが疲れていようが、全身全霊をかけて自身のボクシングに徹する姿勢は凄いです。

ジョーさんは9R以降を全てマイダナにつけたとのことでしたが、マイダナ優位は認めるにもせよどのラウンドもコテルニクに振られておかしくないと思いますし、ポイント狙いを越えたクリーンヒットへの衝動のようなものまで感じました。公式ジャッジのラウンドごとのポイントを知りたいところですが、現時点では見つからず。

破れたマイダナ選手も素晴らしいですよ。コテルニク選手が上手かっただけで、規格外のパワーに加えてテクニックも持っている。おまけに打たれ強い・・・。この階級で、コテルニク選手以外にこの選手に勝てる選手がいるのか?しかし、人気、実績で階級第一人者としてリッキー・ハットン選手がいるし、他にも体重超過野郎のネート・キャンベル選手も上げて来ると言う話だし。なによりあのパッキャオ選手とあのファン・マヌエル・マルケス選手も、上げてくるんだよなあ、このスーパーライト級に。やってみないとわからない、か。


この試合を見て思い浮かべたのが、先日のクリス・ジョン選手VSフアレス選手。フアレス選手が今日のコテルニク選手くらい、反撃の有効打を明確な形で取っていたら、ドローにも納得いったんですがね・・・。