Dinosaur Jr『Bug』


去年、Lou Barlowを含むオリジナルメンバーで再結成していたのですね。知らなかった。


これはほぼリアルタイムでたまたま出会った、グランジ前夜の名盤として評価の高い3rd。個人的にも、Dinosaur Jrの中ではダントツのトップだし、今までの人生の中で最も長く、15年近く聴き続けてきたアルバム。不思議となかなか飽きない。

アルバム全体で見ると、後半が多少散漫ですが、5曲目までの流れは素晴らしいです。その中でも、3曲目までがとび抜けている。

1曲目の『Freak Scene』は、彼らの初期の代表曲として有名な脱臼ポップソング。ユルユルの曲展開に乗ってダラダラとかき鳴らされる轟音ギターが実によい。憂鬱ソングの4曲目、疾走ソングの5曲目は、これ以降の彼らのパブリックイメージを予見するような出来栄え。

だが、僕が真に押したいのは、2曲目『No Bones』と3曲目『They Always Come』。この時期の彼らの作曲力の高さを見せ付けるナンバー。多分この2曲がなかったら、僕は早々に彼らのことを忘れていたのでは、と思う。『No Bones』は個人的に彼らのベスト。憂鬱な空気を凝縮したようなギターで這いずる序盤、そこから一転して激しいギターリフで盛り上がる中盤、そこから再度元の憂鬱さにゆるゆると回帰する後半。聴き終えて、何か落ち着く気分にさせられるのが不思議。中盤の祈りのような希求力とあわせて、どこか宗教歌のような性格も持っているナンバー。『They Always Come』はリズミカルでポップな序盤からテンポチェンジして、恍惚とした中〜後半に移行する、その対比が素晴らしい。

このころの彼らは、知名度の向上と反比例してバンドの雰囲気が悪くなっていた時期らしく、そのせいか、このアルバムは憂鬱さで支配されているところがある。中心人物のJ Mascisは、高い評価を受けたこのアルバムを未成熟な1stとまとめて嫌っていたようだし、Lou Barlowはこのアルバムを最後に脱退した。ギターポップ/ロック等のジャンル的再評価の時も、暴力的な勢いのある2ndとポップになった4th以降の狭間で不遇だった。反面一部の人間の思い入れはすさまじい。音そのものに、文学的なところがあり、BGM的な機能評価から外れてしまうところがあるというか。『No Bones』はその空気を凝縮しており、『Yeah We Know』はその中で安らぎを求めたかのようなナンバー。


下で紹介するのはリマスター版ですが、オリジナル版は前半曲が視聴できます。


Bug

Bug


そもそもこのアルバム、ジャーマンメタルにはまっていたころ、洋盤屋で「世界最速ギター!!」という宣伝文句につられて買ったんだよなあ。たしかに早いが、メタル的な速さとは尺度というか次元が違うだろうと。田舎のレコードショップで洋楽の客はメタルマニアばっかだったでしょうから、苦肉の策の売り文句だったのかも。中身は期待したものとは全然違ってたけど、ありがとう。