河合克敏『とめはねっ!』


20〜30代のサンデー読者には懐かしい『帯をギュっとね!』の作者が久々に描いている学園もの。ヤングサンデー連載。
驚いたことに『書道』をテーマにしていて、しかもしっかり面白いです。
1巻の時点では、市民書道大会(このこの小市民的な響きがいい。)への参加の話が進んでいます。ヒロインの設定から『帯ギュ』ファンの取り込みを考えているのかなと思ったら、思ったより書道中心の真っ向勝負です。ミッタン、杉、宮崎の三馬鹿トリオが『人気のないスポーツ・柔道』のイラストで出てきたのは懐かしかった。


メインキャラの構成で言うと、今のところ男はひたすら気弱で善良な主人公の大江緑だけ*1で、女の子が多いですね。現実の範囲内で癖の強い女の子たち。
大江緑は帰国子女*2だけど祖母との文通で硬筆がうまい。謀らずも先輩書道部員の着替えを覗いてしまい、脅されて人数不足の書道部入り。
ヒロインの望月由希はそもそも柔道部の逸材で、しつこく言い寄る不良男子を投げ飛ばした際に主人公を巻き添え*3にして怪我させたことから、これまた先輩書道部員の計略で書道部のかけもち臨時部員に。書道は下手。書道の技術の紹介は、字の下手な由希に対する教えという形で描かれており、これがなかなか堂に入っています。気が強く負けず嫌いの彼女が書道の深みにはまっていくさまが良いです。あくどい先輩女子二人と彼女の抗争も見所。
他に書道部の先輩として、おとなしくまじめな部長の日野ひろみ、乱暴者で腹黒い加茂杏子、クールビューティで腹黒い三輪詩織、という書道部五人がメインキャラです。加茂と三輪の悪事コンビもこの作者らしいユーモアがあってとても良い。
女子の比率が高く、しかも気が強い子ばかりで、男は軟弱というと昨今のハーレムもののようですが偏った感じはなく、物語としてはある意味レトロな学園ものです。なんというか、ハーレムものはアニメはともかくドラマにはなりにくそうなのに比べて、これは普通にアイドルの女の子でドラマ化できそうな感じなのです。元気な子が多いのも良い。『モンキーターン』は健気な女の子が多くて、ちょっと物足りなかったので。中でも、さすが海老塚桜子を生み出した作者の本領発揮というべきか、ツンデレではなく普通に気が強い体育会系ヒロインの望月由希が特に良いです。書道大会にジャージで来て先輩女子の顰蹙を買い、「コレはいちおうお出かけ用のジャージですよ!」などじつにほほえましい。


作中で使われている書道作品は大学の同好会などから提供されており、すべて作者名が明記されています。これがなかなか見ごたえがあるのも見所。


とめはねっ! 鈴里高校書道部 1 (1) (ヤングサンデーコミックス)

とめはねっ! 鈴里高校書道部 1 (1) (ヤングサンデーコミックス)

*1:後は先生と、望月にちょっかいをかけた不良(後に柔道部に入部)だけ。連載のほうでは他校のイケメンが出てきているようですが

*2:ただし外見はガチャピン似で地味な性格

*3:止めに入ろうとしてなのだが、由希は気づいていない